‘レコーディング・ニュース’ カテゴリーのアーカイブ

レコーディング・ニュース(2017年5-6月/イタリア1)

2017 年 7 月 10 日 月曜日

20170602-01 今年も5月・6月は、オーストリアはウィーン、イタリアはいつものウンブリア州のウンベルティーデと南イタリアのサレルノに行って、都合7枚分のCDのためにレコーディングを行った。

まずは最後のセッションになった、サレルノの聖ジョルジョ教会でのベーゼンドルファーの新しいグランド・ピアノを使ったCD2枚分のピアノ録音をご紹介する。

このサレルノの聖ジョルジョ教会は、16世紀の末、まだこの地がランゴバルド王国の支配下にあった時代に、聖ジョルジョ修道院として建てられ、修道女の居住施設とバロック時代の教会としては、フランチェスコ・ソリメーナとその父アンジェロの手になる最高の天井部分の装飾絵画が有名で、今日もその原画が見事に保存されていて、サレルノの中心街にたって観光の名所となっている。

また、この教会の音響が秀でていることや楽器を持った天使の絵が天井や壁面に多くあるところから、昔からコンサートにもたびたび使われていたが、市の観光局が、イタリアの音楽雑誌『アマデウス』にカメラータのCDが付録についたのをみて興味を持ち、2013年の10月に我々をサレルノに招待してレコーディングの機会を与えて下さった。それが、地元のピアニスト、コスタンティーノ・カテーナとナポリの世界で一番古いオペラ座と言われるサンカルロ・オペラ座の主要メンバーから成るサヴィニオ弦楽四重奏団によるシューマンのピアノ四重奏曲、五重奏曲の録音(CMCD-28320)で、これがこの教会における初録音であった。

今回は、この聖ジョルジョ教会にベーゼンドルファーが新しく発表した280VCという新モデルのピアノを運び込んで、是非ともデモンストレーションになる記念的なアルバムを制作してほしいと、イタリアのヤマハの松岡さんから打診があり、全面的な協力のもとに、2枚のピアノ録音をすることになった。

我々は5月31日にウンブリアからサレルノに移動して、翌日の6月1日から6日まで、まずは、コスタンティーノ・カテーナのソロを録音した。我々のアイディアは、『デディケーション・献呈』というタイトルで、シューマンとリスト、2人の作曲家が互いに捧げあった作品を収める、というもの。即ち、リストはピアノ・ソナタ ロ短調S.178、シューマンは「幻想曲」ハ長調Op.17という2曲の組合せである。

コスタンティーノ・カテーナは、この数年ウンベルティーデの聖クローチェ美術館でファツィオーリを使ってシューマンの主要なピアノ独奏曲集の録音を続けており、この流れで「幻想曲」ハ長調だけをベーゼンドルファーというわけにもいかないので、5月26日にわざわざウンブリアに来てもらって、ファツィオーリでも収録した。

リストのピアノ・ソナタ ロ短調は、私も永らくレコーディング・プロデューサーをしているせいか、今回が4回目なので、最後の機会と念じて臨んだ。楽譜のエディションについては、カテーナはヘンレ版を使うと聞いていたので、ベーレンライター版も持参して違いを吟味、検証して、納得の行く結論を導くように、時間をたっぷり使って収録した。例えば、このソナタの最後の音は、ヘンレ版では単音なのだが、ベーレンライターはオクターヴ下の音を加えている――といった具合に。

 

 

幸いなことに、6月2日に地元のテレビの取材があって、テレビ局がそれを即日編集したらしく翌日にはYouTubeで見られるようになった。我々のリストのピアノ・ソナタのテイク18を見事に捉えて、聖ジョルジョ教会の響きと新しいベーゼンドルファーのグランド・ピアノの魅力を伝えているので、我がホームページにも採用させてもらった。

カテーナは、この2曲のプログラムで6月9日(金)に聖ジョルジョ教会でベーゼンドルファー280VCのお披露目を兼ねてコンサートを行ったようである。当日は、イタリアのヤマハの社長がご臨席で、スピーチもあったようだ。

20170605-02 もう1枚の、このベーゼンドルファーを使ったレコーディングは、日本から高橋アキを迎えて、彼女にとっては6枚目のシューベルトの録音である。

今回のメインプログラムは、後期のピアノ曲では死の直前に書かれた「3つのピアノ曲」D.946と4手のための「幻想曲」D.940の2曲である。それらを中心にして、「12のドイツ舞曲」D.790や珍しいアウグスト・ホルン編曲の「美しき水車小屋の娘」のピアノ独奏版より3曲、ディアベッリのワルツの主題による変奏曲を収録した。

高橋アキのピアノ録音は、基本的にはシューベルトはすべてベーゼンドルファーを使い、エリック・サティはイタリアでファツィオーリを用いてレコーディングをして来ている。

20170606-01 今回は新しいベーゼンドルファーのグランド・ピアノとの対面がイタリアのサレルノで実現したもので、しかも4手作品の相手は、すでにサティの4手(これは未発売だが来年にはリリースする予定)で共演したコスタンティーノ・カテーナ。気心の知れたカテーナがいるサレルノで、アットホームな雰囲気の中、録音は進行した。

「3つのピアノ曲」は、色々とカットした版を自分で作って弾いている人も多いが、我々はシューベルトの作曲したすべてを大切に扱い、省略することは避けた。

録音しながら涙がでるほどシューベルトの晩年に思いを馳せて仕事をした。

サレルノの録音が終わって、高橋アキは自分と縁のある作曲家ジャチント・シェルシが生まれ育った街から招かれて一泊したり、帰路にローマに立ち寄り、シェルシの歌の初演を数多くした先輩のソプラノ平山美智子を、レコーディング以来久しぶりに訪ねたりした上で帰国したようだ。

レコーディング・ニュース(2014年6月/ウィーン)

2014 年 7 月 14 日 月曜日

 ウィーン・フィルの新しい顔、カール・ハインツ・シュッツと弦楽のトップ奏者、ダナイローヴァ、リー、ヴァルガの最高のメンバーによるモーツァルト「フルート四重奏曲」
 昨年、悲しいことにヴォルフガング・シュルツというウィーン・フィルのソロ・フルーティストを亡くした我々は、シュルツとは果たせなかったモーツァルトのフルート四重奏曲の録音を、新たに彼のあとのポジションに座った、次世代の世界トップ奏者、カール・ハインツ・シュッツと今回初録音した。
 ヴォルフガング・シュルツがこの曲をカメラータに録音出来なかったのは、元ウィーン・フィルのコンサート・マスターのゲーデが主催する弦楽四重奏団とこの曲を、ドイツのレコード会社に録音していたため、5年以内は再録音が出来ないという事によるものだった。そのかわりに、モーツァルトのオペラのフルート四重奏曲版(モーツァルトが生きていた時代にオーボエ奏者のヴェントが編曲したもの)を録音した。
 今回の録音では、ヴァイオリンにウィーン・フィルの女性コンサート・マスターのアルベナ・ダナイローヴァを説得して、ヴィオラとチェロはシュルツの録音と同じ、トビアス・リーとタマーシュ・ヴァルガ。現在のウィーン・フィルでは、この作品を録音するのに最良のメンバーが集まったと思っている。
 シュッツはオーボエ四重奏曲ヘ長調K.370をそのままフルートで吹くという。今までにこの曲をホフマイスターが編曲した版をシュルツと録音したことがあり、その譜面を借りてはいかがかと尋ねたら、「大丈夫、練習して高い音を克服したから。」と返事がきた。こうしてカール・ハインツ・シュッツの、私がプロデュースする初めての録音セッションが決定し、6月2日から4日の3日間、久しぶりにスタジオ・バウムガルテンに帰ってきてのレコーディングとなった。朝はオーケストラのオーディション、夜はオペラいうウィーン・フィルの日常生活の中で、お昼から夕方にかけてのセッションを2回。初日は朝10時から夕方6時までの2セッションと都合4セッション+数時間の余裕で4曲のフルート四重奏曲とオーボエ四重奏曲を収録した。
 ともかく、この4人はみんな良く弾けるし、モーツァルトの素晴らしさも恐ろしさも、すべて良くわかっていて、どこも手抜きしないで大切、丁寧に演奏してくれる。話すことはアーティキュレーションでそれが明確に聴く側に伝わる演奏かどうか、fとpのダイナミックはモーツァルト自身が書いてないことも多く、それを徹底する色々なディスカッションをした。斯くの如く、和気あいあいの中にも真剣さあふれる楽しいセッションであった。

レコーディング・ニュース(2014年3月/イタリア)

2014 年 4 月 14 日 月曜日

 久しぶりに3月、イタリアのウンベルティーデに来て、ソプラノのジェンマ・ベルタニョッリと初めてレコーディングを行いました。
 2012年12月23日フィレンツェでトスカーナ交響楽団とメンデルスゾーンの第二交響曲のソリストで彼女が歌うと知って、そのためだけにわざわざ日本から彼女の声を聴きに来たのを昨日のことのように思い出します。
 前から声をかけていたとはいえ、コンサートが終わった後に、2013年の草津音楽アカデミーの講師として来てもらいたいと交渉して快諾を得て、クリスマスイブとクリスマスを一人ぼっちになりながらも、楽しい気分で過ごしました。もちろん世界中でもっとも好きな街のひとつですから、フィレンツェのクリスマスも人生の中で一度は味わっておきたかったのかも知れません。
 さて、ジェンマとはもうすっかり草津で一緒に仕事をして親しい仲ですが、イタリアに来ると、たとえばテレビで彼女がミラノのスカラ座で子供たちのために歌ったコンサートのライブを見る機会があって、彼女のこの国での人気に驚かされていました。エンニオ・モリコーネの映画で主題曲のヴォカリーゼを若い頃に担当したこともあって、広く大衆まで彼女の名前と声は知られているようです。
 彼女の声の特質はもちろん、コロラトゥーラ・ソプラノですから、声の軽さと高い声域でのすばらしいコントロールにありますが、僕の感じるのは声の純粋さ、透明でクリスタルな美しさです。音程が悪くなると、「お腹の支えが上がっているのかな?」というと、若い頃からボイストレーナーの先生にそれだけは基本をみっちりと身につけさせられたから、すこし休めば大丈夫と、テイクを多く録るとなるとすこし頭を切り替え、身体も休めて、またもとのしっかりと芯のある力強い声にもどってきます。頼もしい歌い手であります。しかも、いつも楽しそうに振舞ってくれるので、周辺の気遣いを逆に安心させてくれます。
 今回は音楽監督的存在に、クラウディオ・ブリツィを据えたので、古楽の奏法を取り入れ、オーケストラはいつもの「イ・ソリスティ・ディ・ペルージャ」ではなく、2年ほど前からペルージャの秋の音楽祭で活躍するために結成された”Orchestra da Camera di Perugia”のメンバー。それに特別にテオルボ、リュート、バロックギターを弾くGian Luca Lastraioli氏をフィレンツェから招きました。
 録音のメインの曲は、モーツァルトのモテット「踊れ、喜べ、汝幸いなる魂よ」だが、普通にオーケストラで録音するのと違って、随所にバロック的要素を組み込み、ゲネラルバスが活躍するようにして演奏、録音しました。それは一緒に収録したヴィヴァルディのモテット「まことの安らぎはこの世にはなく」やヘンデルのアリアも同じスタイルでオーケストラが演奏したということで、是非ともその演奏と歌を多くの方に楽しんでもらいたいと思っています。

レコーディング・ニュース(2014年3月/プラハ)

2014 年 4 月 11 日 金曜日

 パノハ弦楽四重奏団はこの10数年、草津夏期国際音楽祭において、ハウス・カルテットとしてその年のテーマに合わせてウィーン・クラシックからチェコの近代の曲まで、あるいは弦楽五重奏曲やピアノ五重奏曲といった作品ではほかのプロフェッサーと共演してきました。
 僕が彼らと録音を開始したのは、1999年6月、スメタナの第1番のカルテット「わが生涯より」ホ短調と第2番のニ短調の収録でした。当時は彼らが共産圏時代のチェコのレーベル、スプラフォンに、ドヴォルジャークの初期の作曲者が生前は公開しなかった作品も含めた弦楽四重奏曲14曲の完全全集を録音していて、日本コロムビアからそのライセンス盤が出ていたので、即ドヴォルジャークを録音するのにためらいがありました。が、彼らの演奏を毎年聴いているうちに、やはりドヴォルジャークは独特の哀愁を帯びた音色と歌心があって、1970年代のスプラフォンの録音と違って成熟してきたグループの最高潮の時期に作曲者が出版社「ジムロック」から正式に自分のカルテット集として出版した7曲と、有名な歌曲を弦楽四重奏曲に編曲した「糸杉」(ツィプレッセン)を改めて収録したいと決心し、都合10数年かけて、今回やっと7曲目の「弦楽四重奏曲 第8番 ホ短調」をスプラフォン時代から彼らが使ってきたDomovinaのスタジオを使って収録しました。
 このスタジオは、いわばプラハの文化センターのひとつで、ウィーンのカジノ・ツーガニッツと同じ形で広さも良く似た舞踏会場として昔はよく使われていたものと思われるホール。板目の床と響きの美しいホールです。同時に今回はブルーレイ・ディスクのために、ハイサンプリングの録音をどうしても残しておきたかったヘ長調 作品96の「アメリカ」とあだ名される有名な曲も再録音を試みました。
 ただ、この建物の地下は以前は映画館だったのですが、その映画館がつぶれて、いつの間にかボクシングや格闘技のジムのトレーニング・センターに貸し出されていて、ウィークデイの日中はサンドバックを打ったり、バーベルを落とす音がスタジオに入ってきて、録音に使えない日も出てくる始末。結局、朝8時スタートで11時までのセッションを2日やって、土曜日、日曜日はジムが休みだったので、集中してレコーディングを重ねましたが、神経的には我々もミュージシャンも集中がそがれ、苦労してセッションを終えました。
 という訳で、今回はカレル橋を歩く暇もなく、観光は一日市内のミュステル周辺でボトムラインというCDショップに行ったり、いつも行くビアハウスで美味しい地ビールを一度飲んだだけの録音ツアーに終わりました。次は旅行者として一度来てみたいものです。

写真:録音風景。音を決めている。

レコーディング・ニュース(2014年4月/ウィーン)

2014 年 4 月 9 日 水曜日

 森美加とギゼラ・マシャエキ=ベアによるジョリヴェのフルート全作品録音の試み
 
 ギゼラの師、ヴォルフガング・シュルツが昨年の3月28日に亡くなってから、1年が経ちます。弟子の中ではフォーグルマイヤーは師より1年前の2012年1月に亡くなっており、ギゼラはこうした師や先輩のためにフルート作品の中でも難曲として知られているジョリヴェの全作品(コンチェルトを除く)を永年のパートナーである森美加を伴ってレコーディングしようと決意し、その情熱に動かされて今回の収録となりました。ただし、フルート・ソロ、フルートとピアノのデュオを含めてジョリヴェのすべての作品を収録しても40数分にしかならないために、その組み合わせとして最近人気のあるジャン・フランセの作品を同時に2曲録音して1枚のアルバムとすることに決めました。
 ピアノはスタインウェイをいつものバウムガルテンに運び込み、4月5日から7日の3日間、集中して良い録音ができたと思っています。

録音曲目
アンドレ・ジョリヴェ:
ファンタジー・カプリス
フルート・ソナタ
リノスの歌
5つの呪文

ジャン・フランセ:
フルートとピアノのためのディヴェルティメント
無伴奏フルート組曲

「デュオ・アマル」来日レコーディング完了!

2013 年 8 月 15 日 木曜日


一部新聞でも報道がありましたが、本年4月、鮮烈な日本デビューを果たしたピアノ・デュオ「デュオ・アマル」が8月8日に来日し、9日と10日の2日間、レコーディング・セッションを行いました。「アマル」は、アラビア語で「希望」。イスラエル人のヤロン・コールベルク、パレスチナ人のビシャラ・ハロニは、政治や国家の壁を乗り越え、音楽で結ばれたデュオとして世界で注目を集めています。

今回のレコーディングは、2台ピアノによる、ロシア・プログラム。ラフマニノフの組曲第1番「幻想的絵画」、ショスタコーヴィチのコンチェルティーノ作品94、ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカからの3楽章」を、聴衆の喝采を浴びた東京デビューの会場と同じ武蔵野市民文化会館小ホールで収録しました。

最も注目すべきは、彼らの奏でる音楽の素晴らしさであることを再確認したレコーディング・セッションでした。CDリリースは本年中の予定。録音の詳細は、改めてレコーディング・ニュース等でご紹介していきます。

レコーディング・ニュース(2013年4月/ウィーン)

2013 年 6 月 13 日 木曜日

2013年4月19~21日/シンフォニア・スタジオ(ウィーン・コンツェルトハウス)

収録曲目:
ツェムリンスキー:チェロ・ソナタ イ短調
エマニュエル・モール:アリア
                               :チェロ・ソナタ 第1番 ハ短調 作品22

タマーシュ・ヴァルガの新録音!

 永年、デュオとして度々コンサートで共演し、プライヴェート盤として二人で自主制作したCDにブラームスのソナタ2曲やその他数枚。ピアニストのクリストファー・ヒンターフーバーがナクソスが専属契約のような形で他社への録音をしばっていたために、僕も10数年の友人だがレコーディングを控えてきたが、チェロのタマーシュ・ヴァルガはこのところ、カメラータへの録音で優れたアルバムを発表し、評価も高くなってきたので、やっと自由に録音が出来るようになったヒンターフーバーとのデュオで、初めはブラームスのチェロ・ソナタ2曲の収録を目論んでいて、そのプログラムを決めたのは昨年(2012年)の12月。
 ところが彼等が楽友協会のグレスナー・ザールで2月12日に行ったデュオ・リサイタルのコンサートを聴いて、録音曲は僕の中で一転した。チェロ・ソナタはこれまで作曲家の名前すら知らなかった私にこの曲を知ったのは、衝撃的な出会いになった。この日に二人が奏いたほかの曲目、ポッパーのソナタとツェムリンスキーのイ短調のソナタ。僕と録れば、ヴァルガがチェリストで、もっと上のレヴェルの演奏になると考えたので、ナクソスの契約がどうなっているかを正した上で、ポッパーを見送ることにして、収録曲を決めた。
 ところが、二人のスケジュールで録音に時間が取れるのが限られていて、その中でスタジオを確保するのに苦労をした。
 結局、レコーディングは4月19日~21日、コンツェルト・ハウスの地下にあるシンフォニアというスタジオになった。ここに入ったスタインウェイの状態が良いということが決めてになったが、この3日の前後の二人のスケジュールは、ヒンターフーバーがフンメルのピアノ協奏曲を連続してコンサートで弾くので、ずっとウィーンにいない。タマーシュはウィーン・フィルの演奏旅行でロシア、北欧に行っていて、シュルツの葬儀の4月14日、それにも出席できないという多忙。ただ、録音する2曲は二人は幾度となくコンサートで奏いてきたレパートリーだけに、私は安心して録音に望んでいた。
 コンサートホールと違って、録音を目的としたスタジオは遮音やノイズ対策には優れているが、クラシック音楽の録音にはいつも「響き」を直接音とバランスよく録るのに苦労する。今回も初日にピアノの位置を数回動かしたりしながら3時間近く音決めに手間取った。音が決まればあとは音楽だけの問題で、その点ではこの二人と仕事をするのは楽しい作業だった。ともかく我々が欲しい演奏を厳しく吟味しながら録っていった。特に二人ともがアパショナートでffという形の中ではバランスを取るのがスタジオでは直接音がダイレクトに多くマイクに入ってくるので、細かくここではチェロを、ここではピアノのこのフレーズをしっかりと聴かせてほしいと頼んだ。
 ツェムリンスキーのソナタでは、ヒンターフーバーは前の録音とは全く演奏は違う時限に届いたと喜んでくれた。一日も早く発売をいそぎたい録音だ。

レコーディング・ニュース(2013年2月/イタリア)

2013 年 4 月 30 日 火曜日

2013年2月17~23日/ウンベルティーデ(イタリア)

収録曲目:
フランク:前奏曲、フーガと変奏曲 作品18
リスト:交響詩「前奏曲」S.97
ヴェルディ:オペラ「オテロ」より 柳の歌 
ヴェルディ:オペラ「オテロ」より アヴェ・マリア
ヴェルディ:オペラ「イル・トロヴァトーレ」より 恋はばら色の翼に乗って
ヴェルディ:オペラ「ナブッコ」より かつては私の心も喜びに満ちていた
プッチーニ:サルヴェレジーナ
サンサーンス:セレナード 作品15
サンサーンス:舟歌 作品18
サンサーンス:祈り 作品158
リスト:ハンガリー戴冠ミサ曲より“オッフェルトリウム”と“ベネディクトゥス”
ブリッソン:ベッリーニの歌劇「ノルマ」による幻想曲

 2月17日にウィーンからイタリアはフィレンツェに飛んで、いつものウンベルティーデの聖クローチェ美術館で録音。今回は2年前に草津の音楽祭にも運ばれて演奏された、ミュステル社製 (1897年) ハーモニウム&チェレスタを中心に、ショパンの亡くなる2年前の1847年に製造された、エラールのピアノを使って19世紀サロン・コンサートのプログラムを再現してレコーディングをする、という企画を実現した。したがって、今回はAのピッチは、438.5。選ばれたプログラムは、今年の草津でもいろいろ演奏される予定でいる。フレンチ・ピースから、ヴェルディのアリアなどいろいろ。もちろん、リストの交響詩「前奏曲」も含まれる。
 ハーモニウムは日本で俗にいう足踏みオルガンで、そのハーモニウムを愛して使った作曲家は、リスト、サン=サーンス、セザール・フランク、シェーンベルクなど、かなりの作曲家がいるが、それは日本では認識の対象外のようで、この楽器を使って書かれた多くの作品があまり演奏されないのは、この楽器への偏見により、作品も重要でないと考える音楽学者の思考が起因しているようです。
 ヨーロッパの日常の音楽を語るうえで、ハーモニウムの音楽は重要であり、それを無視しては人々と音楽のつながりを理解することができない。これは、音楽史のひとつの盲点になっているような気がする。

 演奏者は、クラウディオ・ブリツィのハーモニウムを中心に7人の奏者が参加。

クラウディオ・ブリツィ(ハーモニウム&チェレスタ)
カルロ・パレーゼ(ピアノ)
コスタンティーノ・カテーナ(ピアノ)
パオロ・フランチェスキーニ(ヴァイオリン)
マーヤ・ボグダノヴィッチ(チェロ)
ジョヴァンア・マンクル(ソプラノ)
ミニー・ディオダティ(ソプラノ)
マリオ・チェケッティ(テノール)


 2月18日から23日まで、毎日夜は11時までの強行なスケジュールの中、無事に完了しました。

 ハーモニウムを実際に録音して、一番に驚いたことは、この楽器の表現力の可能性だった。昔のシャンソンの伴奏にアコーディオンが使われていたのを思い出してほしい。なんとよく歌って、やわらかい音で軽やかなことか。魅力的で、聞き手を心地よくさせてくれる。こんな表現ができうる楽器は、クラッシクにはさほど見つからないのではないだろうか。風が歌う。ハーモニウムにぴったりの表現だ。ハーモニカ、アコーディオン。リード楽器の特徴であるといえば、それだけだが、やはり、この旋律の歌い方はほかにない。セザール・フランクの前奏曲の冒頭のブリツィの演奏を聴いて、心を動かされない人はいないだろう。
 楽しく奥深い、そんなアルバムに仕上がったと思っている。

レコーディング・ニュース(2013年2月/ウィーン)

2013 年 2 月 19 日 火曜日

ベートーヴェンの「スプリング」ソナタの再録音に挑戦

2013年2月14日/スタジオ・バウムガルテン(ウィーン)

ベートーヴェン:スプリング・ソナタ

 20年近く昔に録ったベートーヴェンの2大名曲ヴァイオリンソナタ「クロイツェル/スプリング」のカップリングは、長く類盤の比較でも、心ある評論家の方から誠実で正統的なアプローチと心の通った暖かい演奏として高く評価されてきましたが、2011年12月に「クロイツェル・ソナタ」をハイビット/ハイサンプリングで再録したのを機に、「スプリング・ソナタ」とのカップリングを「ハイレゾオーディオ・ブルーレイディスク」でリリースすべく、急遽再録音することに決め、今回もクロイツェル・ソナタに合わせてピアノはスタインウェイを使用。
 前の録音では、二人の作品への新鮮なアプローチが魅力だったが、それから何回もこの曲をステージの上でひいてきた二人。良く考え、作品をいつくしみ、よく歌うウィーン風のベートーヴェンは聴く人に慰めを与えてくれる ― そんな演奏にできあがったと思っている。

 録音も高島エンジニアが、今までで一番いいデュオの録音にしたい、と張りきって音を作り、クロイツェル・ソナタとは曲も音も対照的になるよう心掛けてくれて成功したと思っている。
 ブルーレイディスクでの発売がオーディオファイルの方々に、広く受け入れてもらえるものと確信している。
 録音は2月14日。新装になったスタジオ・バウムガルテン。

レコーディング・ニュース(2013年1月/ウィーン)

2013 年 2 月 18 日 月曜日

アルテンベルグ・トリオによるシューマン:ピアノ三重奏曲 全曲録音スタート

 2012-2013シーズンにウィーン楽友協会の室内楽シリーズで「アルテンベルグ・トリオ」は都合5回のコンサートを行う。そこではシューマンのピアノ・トリオ3曲と幻想小曲集のピアノ・トリオ版(シューマン自身の編曲/1850年)と、ベートーヴェンの作品1のピアノトリオ3曲が含まれていて、それを全曲収録しようというのが我々の企画の意図でもあり、また彼等のこの室内楽チクルスの目的でもある。
(さらに…)