レコーディング・ニュース(2013年2月/イタリア)

2013年2月17~23日/ウンベルティーデ(イタリア)

収録曲目:
フランク:前奏曲、フーガと変奏曲 作品18
リスト:交響詩「前奏曲」S.97
ヴェルディ:オペラ「オテロ」より 柳の歌 
ヴェルディ:オペラ「オテロ」より アヴェ・マリア
ヴェルディ:オペラ「イル・トロヴァトーレ」より 恋はばら色の翼に乗って
ヴェルディ:オペラ「ナブッコ」より かつては私の心も喜びに満ちていた
プッチーニ:サルヴェレジーナ
サンサーンス:セレナード 作品15
サンサーンス:舟歌 作品18
サンサーンス:祈り 作品158
リスト:ハンガリー戴冠ミサ曲より“オッフェルトリウム”と“ベネディクトゥス”
ブリッソン:ベッリーニの歌劇「ノルマ」による幻想曲

 2月17日にウィーンからイタリアはフィレンツェに飛んで、いつものウンベルティーデの聖クローチェ美術館で録音。今回は2年前に草津の音楽祭にも運ばれて演奏された、ミュステル社製 (1897年) ハーモニウム&チェレスタを中心に、ショパンの亡くなる2年前の1847年に製造された、エラールのピアノを使って19世紀サロン・コンサートのプログラムを再現してレコーディングをする、という企画を実現した。したがって、今回はAのピッチは、438.5。選ばれたプログラムは、今年の草津でもいろいろ演奏される予定でいる。フレンチ・ピースから、ヴェルディのアリアなどいろいろ。もちろん、リストの交響詩「前奏曲」も含まれる。
 ハーモニウムは日本で俗にいう足踏みオルガンで、そのハーモニウムを愛して使った作曲家は、リスト、サン=サーンス、セザール・フランク、シェーンベルクなど、かなりの作曲家がいるが、それは日本では認識の対象外のようで、この楽器を使って書かれた多くの作品があまり演奏されないのは、この楽器への偏見により、作品も重要でないと考える音楽学者の思考が起因しているようです。
 ヨーロッパの日常の音楽を語るうえで、ハーモニウムの音楽は重要であり、それを無視しては人々と音楽のつながりを理解することができない。これは、音楽史のひとつの盲点になっているような気がする。

 演奏者は、クラウディオ・ブリツィのハーモニウムを中心に7人の奏者が参加。

クラウディオ・ブリツィ(ハーモニウム&チェレスタ)
カルロ・パレーゼ(ピアノ)
コスタンティーノ・カテーナ(ピアノ)
パオロ・フランチェスキーニ(ヴァイオリン)
マーヤ・ボグダノヴィッチ(チェロ)
ジョヴァンア・マンクル(ソプラノ)
ミニー・ディオダティ(ソプラノ)
マリオ・チェケッティ(テノール)


 2月18日から23日まで、毎日夜は11時までの強行なスケジュールの中、無事に完了しました。

 ハーモニウムを実際に録音して、一番に驚いたことは、この楽器の表現力の可能性だった。昔のシャンソンの伴奏にアコーディオンが使われていたのを思い出してほしい。なんとよく歌って、やわらかい音で軽やかなことか。魅力的で、聞き手を心地よくさせてくれる。こんな表現ができうる楽器は、クラッシクにはさほど見つからないのではないだろうか。風が歌う。ハーモニウムにぴったりの表現だ。ハーモニカ、アコーディオン。リード楽器の特徴であるといえば、それだけだが、やはり、この旋律の歌い方はほかにない。セザール・フランクの前奏曲の冒頭のブリツィの演奏を聴いて、心を動かされない人はいないだろう。
 楽しく奥深い、そんなアルバムに仕上がったと思っている。

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