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第3回「一柳 慧 コンテンポラリー賞」受賞者決定のお知らせ

2018 年 1 月 23 日 火曜日

作曲家・ピアニストの一柳 慧(いちやなぎ とし)により2015年に創設された「一柳 慧 コンテンポラリー賞」の第3回受賞者が、以下の2名に決定いたしました。

ゼミソン・ダリル (ぜみそん だりる/作曲)

森 円花 (もり まどか/作曲) [敬称略・50音順]

第3回受賞者のゼミソン・ダリル(左)、森円花(右)と審査員の一柳慧(中央)

第3回受賞者のゼミソン・ダリル(左)、森円花(右)と審査員の一柳慧(中央)

選考にあたっては、応募期間の2017年11月中に受理した、「作曲」「パフォーマンス」「執筆」からなる3つのジャンルの応募作品について、一柳慧が厳正に審査を行い、作曲部門に応募された上記2名を選びました。

【一柳慧による選評】

○ゼミソン・ダリル (提出作品:「憂きこと聞かぬところありや」尺八、十三絃箏、十七絃箏、薩摩琵琶、囃子のための[2017])

昨品は尺八を中心に、精密に選択され書き記された、尺八、十三絃箏、十七絃箏、薩摩琵琶、囃子の編成によっており、各奏者は演奏と共に、西行の和歌、ラテン語の諺、源実朝の和歌、そして鴨長明の「方丈記」の中の一節の詞を歌いあげてゆく。
それはさまざまにうつろう時代や社会の精神と、厳しい現実が交差する世界を色濃く投影しながら、独自の記譜法を用いた音楽的内容によって、劇的な情感を写し出すことに成功している。

 

○森 円花 (提出作品:「Melodia for orchestra」[2017])

この作品は、オーケストラ奏者1人1人がソリストでもあることを意識して書かれている点に特徴がある。それによってオーケストラの可能性は大きく拡がり、曲には活き活きとした緊張感の高い躍動性が漲っている。
また、オーケストラの技術の刷新もあって、新しい響きの発露を感じさせる部分も随所に見られ、作品への考え方が明確に打ち出されている。

 

【受賞者プロフィール】

ゼミソン・ダリル Daryl Jamieson(作曲)

ゼミソン・ダリル

ゼミソン・ダリル

1980年、カナダのハリファックス生まれ。オンタリオ州ウォータールーにあるウィルフリッド・ローリエ大学のグレン・ビュアー氏、リンダ・ケイトリン・スミス氏のもとで最初の音楽的訓練を受けた。その後渡英、ギルドホール音楽演劇学校でダイアナ・バレル氏に師事、ヨーク大学ではニコラ・レファニュ氏のもとで研鑽を積む。文部科学省の奨学生として来日後、東京藝術大学の近藤譲氏に作曲などを学んだ。平成30年度から昭和音楽大学で非常勤講師。
ゼミソンの作品は時空間に対する鋭い感覚に支えられている。能や日本の伝統音楽(特に箏)、また日本の詩歌から強い影響を受けており、現在は音楽的時間と歌枕の心理・
地理学に深い興味を持っている。代表的な作品に「ヴァニタス・シリーズ」三部作――モノオペラ「松虫」(2014年)、音楽演劇「フォーリングス」(2016年)、和楽器五重奏のための「憂きこと聞かぬところありや」(2017年)がある。他に主要な作品としては、3つの弦楽器四重奏曲「埋木」「warm stones」「monkish fires」、舞踏家・大野一雄氏に献呈された声・琵琶・笙のための三重奏「スペクトル」、2つの大規模な室内楽作品「crystal grapeshot bouquet」および「con tu sueño en mi sueño」、尺八による協奏曲「鎖されし闇」、短編映画『Goodbye My Son』のサウンドトラック、また声楽と箏のための作品「古代女神に扮した私」などがある。近年ではフィールド・レコーディングへの関心を強めており、2016年にはフィールド・レコーディングとパーカッションのための作品「muons」を作曲。彼の作品はボッツィーニ弦楽四重奏団やMusiques Nouvelles、Orchestre National de Lorraine、アンサンブル室町、ピアニストの井上郷子氏、琵琶の上田純子氏、箏の吉澤延隆氏やマクイーン時田・深山氏、アルノルト・シェーンベルク室内楽団、ヨーク大学室内楽団などによって幅広く演奏されている。
ゼミソンは現在、ミュージック・シアター「工房・寂」(www.atelierjaku.com)のアーティスティック・ディレクターを務めている。東京を拠点とした国際的な作曲家集団Music Without Bordersの設立メンバー、また同時に世界中の若手作曲家の作品を、日本の聴衆に届けることを目指して活動するトリオであるmmm…の共同設立者・招聘作曲家でもある。日本の伝統的な楽器のために作品を提供し続けている邦楽2010および日本現代音楽協会所属。
研究活動も並行して活発に行っており、京都学派の美学、現代音楽と精神性に関する論文を執筆中。カナダカウンシル、文部科学省、ヨーク大学などからの受賞、助成多数。
ウェブサイト:www.daryljamieson.com/jp

 

森 円花(作曲)

森 円花 ©Shigeto Imura

森 円花 ©Shigeto Imura

1994年生まれ。
2014年、20歳で第83回日本音楽コンクール作曲部門(管弦楽部門)第2位。在学中、学内オーケストラ作品選考で選出され、桐朋学園大学オーケストラ グリーンホール定期演奏会に出品。2010年桐朋学園作曲科成績優秀者コンサートに出品。12年~17年同コンサートに出品。
2017年神奈川芸術文化財団芸術監督プロジェクト「ミュージック・クロスロード」にて、「音のアトリウム~独奏チェロとオーケストラのための~2018」改訂初演。
桐朋女子高等学校音楽科(男女共学)を経て、2017年桐朋学園大学研究科修了。同年4月より同大学にて非常勤講師として後進の指導に当たる。これまでに作曲を三瀬和朗氏に師事。

 

 

 

【一柳 慧 コンテンポラリー賞について】

一柳 慧 コンテンポラリー賞(Toshi Ichiyanagi Contemporary Prize)は、芸術音楽の充実と活性化、また音楽を通した豊かな社会の創造を目的とし、芸術音楽を基軸に優れた活動を行っている音楽家(作曲家、パフォーマー、指揮者、評論家など)を対象に、各ジャンルの作品の応募を受け付け、一柳慧がその審査を行い、受賞者を決定いたします。この賞に年齢制限はなく、外国人も日本在住の方は応募できます。受賞者には、表彰状と賞金100万円(複数者受賞の場合、賞金は分割)が授与されます。

なお、第4回「一柳慧コンテンポラリー賞」の応募期間は、2019年秋の予定。(詳細は、後日、当ウェブサイトで発表)*応募期間の記載は、本記事公開時の内容を改訂しております。

 

【一柳 慧 プロフィール】

一柳 慧(いちやなぎ とし)

1933年2月4日、神戸生まれ。作曲家、ピアニスト。10代で2度毎日音楽コンクール(現日本音楽コンクール)作曲部門第1位受賞。19歳で渡米、ニューヨークでジョン・ケージらと実験的音楽活動を展開し1961年に帰国。偶然性の導入や図形楽譜を用いた作品で、様々な分野に強い影響を与える。これまでに尾高賞を5回、フランス文化勲章、毎日芸術賞、京都音楽大賞、サントリー音楽賞、紫綬褒章、旭日小綬章、日本芸術院賞・恩賜賞など受賞多数。作品は文化庁委嘱オペラ「モモ」(1995)、新国立劇場委嘱オペラ「光」(2003)、神奈川県文化財団委嘱オペラ「愛の白夜」(2006)の他、10曲の交響曲、9曲の協奏曲、室内楽作品、電子コンピューター音楽、他に「往還楽」「雲の岸、風の根」「邂逅」などの雅楽、声明を中心とした大型の伝統音楽など多岐に渡っており、音楽の空間性を追求した独自の作風による作品を発表し続けている。作品は国内のオーケストラはもとより、フランス・ナショナル、イギリス・BBC、スイス・トーンハレ、ノルウェー・オスロ・フィルなどにより世界各国で演奏されている。現在、公益財団法人神奈川芸術文化財団芸術総監督。また、正倉院や古代中国ペルシャの復元楽器を中心にとしたアンサンブル「千年の響き」の芸術監督。2008年文化功労者。

 

第2回「一柳 慧 コンテンポラリー賞」受賞者決定のお知らせ

2017 年 1 月 6 日 金曜日

作曲家・ピアニストの一柳 慧(いちやなぎ とし)により2015年に創設された「一柳 慧 コンテンポラリー賞」(事務局:株式会社カメラータ・トウキョウ内)の第2回受賞者が、以下の2名に決定いたしました。

川島素晴 (かわしま もとはる/作曲)

杉山 洋一 (すぎやま よういち/作曲) [敬称略・50音順]

第2回受賞者の杉山洋一(左)、川島素晴(右)と審査員の一柳慧(中央)

選考にあたっては、応募期間の2016年10月中に受理した、「作曲」「パフォーマンス」「執筆」からなる3つのジャンルの応募作品について、一柳慧が厳正に審査を行い、作曲部門に応募された上記2名を選びました。

 

【一柳慧による選評】

〇川島素晴 (提出作品:「ギュムノパイディア/裸の若者たちによる祭典」6~9名の西洋古楽器奏者、及び6~9名の邦楽器奏者のための [2016] 楽器編成=篠笛、尺八、笙、ほら貝、琵琶、箏十三絃、胡弓、日本打楽器、ソプラノ・リコーダー、フラウト・トラヴェルソ、セルパン、ポジティヴ・オルガン、チェンバロ、パーカッション、ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート)

川島素晴は、演じる音楽をモットーに創作活動を展開している作曲家である。自らもしばしば演奏家や指揮者として演じる音楽の演奏にかかわっている。
今回の提出作品は東洋西洋の古楽器を素材に、サティの「3つのジムノペディ」を題材にした川島流の設計に基づく、新しい創作である。洋の東西の問題は、日本の音楽家にとって避けて通れぬ問題であるが、そこで生じる両者の微妙な差異あるいは誤差にこそ、その課題と向き合う要素がかくされている。それについて川島は、この作品で次のように述べている。
「2~3名の西洋古楽器でまず演奏され、次に2~3名の邦楽器でそれを模倣すると、若干の誤差が生じる。その誤差を、西洋古楽器奏者が再び模倣し、さらに誤差が生じ……ということを繰り返していく。『室町』時代の後にバテレン追放から鎖国に至る日本史における、歌オラショの継承を想起させるこの変質過程こそが、本来あるべき『東西の融合』ではなかろうか。」
これは、演じる音楽にも通じる川島の独壇場だと言ってもよいだろう。

 

〇杉山洋一 (提出作品:「杜甫二首」~メゾ・ソプラノ、クラリネット、ヴィオラ、ピアノのための [2015])

杉山洋一は作曲家であると同時に、指揮者でもある。その両方を対象にした現代の音楽への精力的な活動は、最近ますます磨きがかかり、注目を集めている。
今回の提出作品は、それぞれの演奏家が自由で独立した立場からかかわりあう構成で、旧い長安の都の民謡の旋律に基づいて書かれている。時代と戦乱に荒れた長安が静かな無常観をもった内容で捉えられ、きわめて精神性の高い音楽に仕上がっている。杉山はその長安の状態を、現代の混沌とした世界の状況と重ね合わせ、当事者ではなく傍観者でしかない自分の気持と符合すると述べているが、そのことがこの音楽を成立させる背景として欠かせない要因となっていることが聴く者に伝わってくる。

 

【受賞者プロフィール】

川島素晴(作曲)

1972年東京生れ。東京芸術大学および同大学院修了。作曲を近藤譲、松下功の各氏に師事。1992年秋吉台国際作曲賞、1996年ダルムシュタット・クラーニヒシュタイン音楽賞、1997年芥川作曲賞、2009年中島健蔵音楽賞等を受賞。1999年ハノーファービエンナーレ、2006年ニューヨーク「Music From Japan」等、作品は国内外で演奏されている。1994年以来「そもそも音楽とは『音』の連接である前に『演奏行為』の連接である」との観点から「演じる音楽(Action Music)」を基本コンセプトとして作曲活動を展開。自作の演奏を中心に、指揮やパフォーマンス等の演奏活動も行う。いずみシンフォニエッタ大阪プログラムアドバイザー等、現代音楽の企画・解説に数多く携わり、2016年9月にはテレビ朝日「タモリ倶楽部」の現代音楽特集にて解説者として登壇、シュトックハウゼン、クセナキス、シュネーベル、ブソッティを紹介した。また執筆活動も多く、自作論、現代音楽、新ウィーン楽派、トリスタン和音等、多岐にわたる論考のほか、曲目解説、コラム、エッセイ等も多数発表している。日本作曲家協議会理事。国立音楽大学准教授、東京音楽大学および尚美学園大学講師。

 

杉山洋一(作曲)

1969年東京生まれ。作曲を三善晃、フランコ・ドナトーニ、サンドロ・ゴルリに、指揮をエミリオ・ポマリコ、岡部守弘の各氏に師事。指揮・作曲ともに日欧で活躍。
ミラノ・ムジカ、ヴェネツィア・ビエンナーレ、ミュージック・フロム・ジャパンなど音楽祭より、そしてブルーノ・カニーノ/大井浩明デュオ、沢井一恵、吉村七重、吉原すみれ、安江佐和子、水谷川優子、橋本晋哉、大石将紀、黒田亜樹他の各氏より委嘱を受ける。
作品はNHK-FMやRAI(イタリア放送協会)、ORF(オーストリア放送協会)より放送されている。「ディヴェルティメントI(1997)」はミラノ、カーサ・リコルディから出版。
阪神淡路大震災のための「灰(1995)」、イラク戦争に抗議する「国境の向こうで(2003)」、スペイン内戦で獄死したミゲル・エルナンデスの詩による「たまねぎの子守歌(2006)」、サハラ砂漠植林計画のための「ツリーネーション(2008)」、絶滅した琵琶湖の昆虫「カワムラナベブタムシ(2008)」など、社会問題を取り上げた作品が多い。
東日本大震災復興のための「アフリカからの最後のインタヴュー(2013)」では、アバチャ政権に処刑されたケン・サロ=ウィワが、また、ガザ侵攻で殺害されたパレスチナの妊婦から生まれた赤ん坊のための「かなしみにくれる女のように、による断片、変奏、再構築(2014)」ではバンショワの引用とパレスチナ・イスラエル両国歌が、そしてまた、ニューヨーク市警エリック・ガーナー窒息死事件のための「禁じられた煙、湾岸通りバラード(2015)」では黒人霊歌と合衆国国歌が、それぞれ作品の核となっている。
「沈みゆく太陽(1993第一稿)」で、イタリア著作権協会賞受賞。「アフリカからの最後のインタヴュー」で、初演した東京現音計画とともに、サントリー佐治敬三賞受賞。ドナトーニ最晩年に杉山が補筆完成したオーケストラ作品「Prom」「Esa」を含む、杉山指揮東京フィルハーモニー交響楽団のドナトーニ・オーケストラ作品集CDが、2015年度イタリアAmadeusディスク大賞(現代作品部門)受賞。
1995年にはイタリア政府から作曲奨学金を得て、それ以来ミラノ在住。現在ミラノ市立クラウディオ・アッバード音楽院にて教鞭をとる。2002年よりWebマガジン「水牛」執筆。2010年サンマリノ共和国サンタアガタ騎士勲章受勲。

 

【一柳 慧 コンテンポラリー賞について】

一柳 慧 コンテンポラリー賞(Toshi Ichiyanagi Contemporary Prize)は、芸術音楽の充実と活性化、また音楽を通した豊かな社会の創造を目的とし、芸術音楽を基軸に優れた活動を行っている音楽家(作曲家、パフォーマー、指揮者、評論家など)を対象に、各ジャンルの作品の応募を受け付け、一柳慧がその審査を行い、受賞者を決定いたします。この賞に年齢制限はなく、外国人も日本在住の方は応募できます。受賞者には、表彰状と賞金100万円(複数者受賞の場合、賞金は分割)が授与されます。

 

なお、第3回「一柳慧コンテンポラリー賞」の応募期間は、2017年11月とし、2018年1月に受賞者を決定、後日、記者発表、贈賞式と懇親会を行います。その他の要項は、第2回同様となります。

 

【一柳 慧 プロフィール】

一柳 慧(いちやなぎ とし)

1933年2月4日、神戸生まれ。作曲家、ピアニスト。10代で2度毎日音楽コンクール(現日本音楽コンクール)作曲部門第1位受賞。19歳で渡米、ニューヨークでジョン・ケージらと実験的音楽活動を展開し1961年に帰国。偶然性の導入や図形楽譜を用いた作品で、様々な分野に強い影響を与える。これまでに尾高賞を4回、フランス文化勲章、毎日芸術賞、京都音楽大賞、サントリー音楽賞、紫綬褒章、旭日小綬章など受賞多数。作品は文化庁委嘱オペラ「モモ」(1995)や、新国立劇場委嘱オペラ「光」(2003)、神奈川県文化財団委嘱オペラ「愛の白夜」(2006)の他、9曲の交響曲、9曲の協奏曲、室内楽作品、電子コンピューター音楽、他に「往還楽」「雪の岸、風の根」「邂逅」などの雅楽、声明を中心とした大型の伝統音楽など多岐に渡っており、音楽の空間性を追求した独自の作風による作品を発表し続けている。作品は国内のオーケストラはもとより、フランス・ナショナル、イギリス・BBC、スイス・トーンハレ、ノルウェー・オスロ・フィルなどにより世界各国で演奏されている。現在、公益財団法人神奈川芸術文化財団芸術総監督。また、正倉院や古代中国ペルシャの復元楽器を中心にとしたアンサンブル「千年の響き」の芸術監督。2008年文化功労者。

シュトイデ弦楽四重奏団のCDが『レコード芸術』特選盤に

2016 年 4 月 20 日 水曜日

3月25日に発売されたCDCMCD-28335『ベートーヴェン「セリオーソ」&シューベルト「死と乙女」/シュトイデ弦楽四重奏団』(CMCD-28335)が『レコード芸術』誌の最新刊(2016年5月号)で【特選盤】に選出されました。

誌面では濱田滋郎氏から、「このクヮルテットの手にかかると、重苦しい沈黙の世界を抜け出て、眼前に音楽の花園が広がる趣である」と評され、中村孝義氏からは「たっぷりとした豊かな響きや美しいカンタービレという伝統をしっかりと身にまといながら、それに安住することなく、核心に踏み込んでいく潔さが随所に感じられ、両局の質を的確に捉えているのだ。」と高く評価されました。

第1回「一柳 慧 コンテンポラリー賞」受賞者決定のお知らせ

2016 年 1 月 14 日 木曜日

作曲家・ピアニストの一柳 慧(いちやなぎ とし)により2015年に創設された「一柳 慧 コンテンポラリー賞」(事務局:株式会社カメラータ・トウキョウ内)の第1回受賞者が、以下の2名に決定いたしました。

大井浩明(おおい ひろあき/ピアノ)

工藤あかね(くどう あかね/ソプラノ) [敬称略・50音順]

第1回受賞者の大井浩明、工藤あかねと審査員の一柳慧

選考にあたっては、応募期間の2015年11月中に受理した60件(56名)の応募作品について、一柳慧が厳正に審査を行い、パフォーマンス部門に応募された上記2名を選びました。 応募作品の内訳は、作曲:35件、パフォーマンス:19件、執筆:6件でした。

 

【一柳慧による選評】

○大井浩明

大井氏の精力的なピアノの演奏活動は、その多様性ゆえに現代作品に焦点をあてたものと捉えられがちである。しかし、彼ほど徹底して1人1人の作曲家の作品を掘り下げて演奏しているピアニストは、稀有な存在と言ってよいだろう。大井の、現代音楽のあらゆる面――例えばグラフィック・スコアで書かれた作品の演奏から、ピアノの内部奏法を含むものや、身体的アクションを伴うもの、そしてきわめて高度な演奏技術と音楽性を要求されるケージやクセナキスやブソッティなどの先端的なもの、すべてを網羅している演奏は特筆に値する。また、2015年から16年初頭にかけてだけでも、ピアノ版によるマーラーの交響曲やシェーンベルクのオーケストラ曲、その他、フランコ・ドナトーニやマウリツィオ・カーゲル、さらに日本の甲斐説宗や篠原眞らの作品までを、ほとんど毎月ごとに、堅実な演奏でリサイタルやコンサートで披露している。さらに大井の場合、忘れてはならないのは、古典楽器や音楽にも精通しており、現代のピアノの演奏とつながったチェンバロやフォルテピアノでバッハやベートーヴェンの演奏も行っていることがある。それら奥深い幅広いレパートリーの背景を司っている大井の演奏哲学も、今回の受賞の対象として欠かせない要素になっていることを併記しておきたい。

 

○工藤あかね

弾けない時は、歌えばいい

歌えない時は、踊ればいい

踊れない時は、書けばいい

という言葉に象徴される工藤の声楽、コンテンポラリー・ダンス、ギター演奏、音楽学など、多岐にわたるクリエイティヴな活動は注目の的である。2015年のトーキョーワンダーサイトのエクスペリメンタル・フェスティバルで最優秀作品となった「Secret Room Vol. 2―布と箱」の公演におけるすべてのプロフェッションを活用したジョン・ケージ、湯浅譲二、松平頼曉らの作品の独自なパフォーマンスの成果、2013年に結成以来、継続している藤田朗子とのデュオ「タマユラ」におけるシェーンベルクの「架空庭園の書」、サティ-ケージの「ソクラテス」、シュールホフやウルマン歌曲の蘇演活動、2015年のサントリー芸術財団サマーフェスティバルでのシュトックハウゼンの超絶技巧を駆使した「シュティムング」の音楽性豊かな、新しい現代音楽の領域を開拓したパフォーマンスなどが受賞の対象になった。そこに見られる音楽と向き合う姿勢は、これからの音楽にとって不可欠になるであろう作品の創造と通底するようなクリエイティヴィティが横溢する芸術行為であると言えるだろう。

 

【受賞者プロフィール】

大井浩明(ピアノ)

大井浩明京都市出身。独学でピアノを始めたのち、スイス連邦政府給費留学生ならびに文化庁派遣芸術家在外研修員としてベルン芸術大学(スイス)に留学、ブルーノ・カニーノにピアノと室内楽を師事。同大学大学院ピアノ科ソリストディプロマ課程修了。朝日現代音楽賞(1993)、アリオン賞(1994)、青山音楽賞(1995)、村松賞(1996)、出光音楽賞(2001)、文化庁芸術祭賞(2006)、日本文化藝術賞(2007)等を受賞。これまでにNHK響、新日本フィル、東京都響、東京シティ・フィル、仙台フィル、京都市響等のほか、ヨーロッパではバイエルン放送響、ルクセンブルク・フィル、シュトゥットガルト室内管、ベルン響、アンサンブル・アンテルコンタンポラン(パリ)、ASKOアンサンブル(アムステルダム)、ドイツ・カンマーオーケストラ(ベルリン)等と共演。
公式ブログ:http://ooipiano.exblog.jp/

*なお、第1回受賞者の大井浩明氏は、2月21日(日)18時より一柳慧ピアノ作品個展を予定しています。 http://ooipiano.exblog.jp/25169504/

 

工藤あかね(ソプラノ)

工藤あかね

(c) Jun’ichi Ishizuka

東京藝術大学卒業。日墺文化協会「フレッシュ・コンサート」最優秀賞、アテネ・オリンピック記念「国際ミトロプーロス声楽コンクール2003」日本代表。近年は身体表現を伴う先鋭的な作品に興味を持ち、シュトックハウゼン講習会で学ぶ。2011年のリサイタル「Secret Room」では、シュトックハウゼン「ティアクライス(十二宮)」にみずから振り付けをほどこし、同作に「踊るソプラノ版」という新たな解釈を拓いた。2015年サントリー芸術財団「サマーフェスティバル」、トーキョーワンダーサイト主催「トーキョー・エクスペリメンタル・フェスティバルVol. 10」に出演。ピアノの藤田朗子とデュオ「タマユラ」を結成し、これまでにサティ「3章からなる交響的ドラマ《ソクラテス》」、ヴィエルヌ「憂鬱と絶望」、シュールホフやウルマン歌曲の蘇演、シェーンベルク「架空庭園の書」などを手がけている。

 

 

【一柳 慧 コンテンポラリー賞について】

一柳 慧 コンテンポラリー賞(Toshi Ichiyanagi Contemporary Prize)は、芸術音楽の充実と活性化、また音楽を通した豊かな社会の創造を目的とし、芸術音楽を基軸に優れた活動を行っている音楽家(作曲家、パフォーマー、指揮者、評論家など)を対象に、各ジャンルの作品の応募を受け付け、一柳慧がその審査を行い、受賞者を決定いたします。この賞に年齢制限はなく、外国人も日本在住の方は応募できます。受賞者には、表彰状と賞金100万円(複数者受賞の場合、賞金は分割)が授与されます。

 

なお、第2回「一柳慧コンテンポラリー賞」の応募期間は、2016年10月とし、2017年1月に受賞者を決定、後日、記者発表、贈賞式と懇親会を行います。条件は、すべて第1回同様となります。

 

【一柳 慧 プロフィール】

一柳 慧(いちやなぎ とし)

1933年2月4日、神戸生まれ。作曲家、ピアニスト。10代で2度毎日音楽コンクール(現日本音楽コンクール)作曲部門第1位受賞。19歳で渡米、ニューヨークでジョン・ケージらと実験的音楽活動を展開し1961年に帰国。偶然性の導入や図形楽譜を用いた作品で、様々な分野に強い影響を与える。これまでに尾高賞を4回、フランス文化勲章、毎日芸術賞、京都音楽大賞、サントリー音楽賞、紫綬褒章、旭日小綬章など受賞多数。作品は文化庁委嘱オペラ「モモ」(1995)や、新国立劇場委嘱オペラ「光」(2003)、神奈川県文化財団委嘱オペラ「愛の白夜」(2006)の他、9曲の交響曲、9曲の協奏曲、室内楽作品、電子コンピューター音楽、他に「往還楽」「雲の岸、風の根」「邂逅」などの雅楽、声明を中心とした大型の伝統音楽など多岐に渡っており、音楽の空間性を追求した独自の作風による作品を発表し続けている。作品は国内のオーケストラはもとより、フランス・ナショナル、イギリス・BBC、スイス・トーンハレ、ノルウェー・オスロ・フィルなどにより世界各国で演奏されている。現在、公益財団法人神奈川芸術文化財団芸術総監督。また、正倉院や古代中国ペルシャの復元楽器を中心にとしたアンサンブル「千年の響き」の芸術監督。2008年文化功労者。

 

カニーノ/西村朗のCDが芸術祭レコード部門優秀賞を受賞

2015 年 12 月 28 日 月曜日

CMCD-283212015年7月25日にリリースされた『ブルーノ・カニーノ プレイズ 西村 朗』(CMCD-28321)が、平成27年度(第70回)文化庁芸術祭レコード部門の【優秀賞】を受賞しました。

受賞理由として、「イタリアの教会内での録音により、幽玄とも夢幻的とも呼びうる、作曲者のピアノ書法の豊かさが一層克明に打ち出されている。間合いを十分にとったカニーノの演奏で、空間の広がりの中に折り重なりあいながら満ちてゆく響きの、靄(もや)のような明滅ないし揺らぎが非常に美しく捉えられている。演奏・録音ともに秀逸な1枚である」と、高い評価をいただきました。

CDは好評発売中です。また、24bit/192kHzのハイレゾデータもHQMストアで配信中です。

「一柳 慧 コンテンポラリー賞」創設、11月に応募受付

2015 年 9 月 14 日 月曜日

IchiyanagiPrize.jpg 作曲家・ピアニストの一柳慧(いちやなぎ・とし)は、2015年9月、新たな音楽賞「一柳 慧 コンテンポラリー賞」を創設いたしました。

一柳 慧 コンテンポラリー賞(Toshi Ichiyanagi Contemporary Prize)は、芸術音楽を基軸に、優れた活動を行っている音楽家(作曲家、パフォーマー、指揮者、評論家など)を対象に選び、芸術音楽の充実と活性化、また音楽を通した豊かな社会の創造を目的としております。
上記のように、作曲、パフォーマンス・指揮、執筆の各ジャンルの作品を対象に応募を受け付け、一柳慧がその審査を行い、受賞者(原則として1名)を決定いたします。

この賞に年齢制限はなく、外国人も日本在住の方は応募できます。

受賞者には、賞状と賞金100万円(複数者受賞の場合、賞金は分割)が授与されます。

第1回の「一柳 慧 コンテンポラリー賞」は、2015年11月を応募期間とし、2016年1月初旬に受賞者を決定、後日、授賞式と交流会を行います。

応募作品の受付、問合せは、「一柳 慧 コンテンポラリー賞」事務局(カメラータ・トウキョウ内、電話:03-5790-5560/FAX:03-5790-5562/E-mail:concert@camerata.co.jp)まで。

応募の詳細は、第1回応募要項&応募用紙をご参照ください。

飯野明日香のCD『フランス・ナウ』が2014年度「レコード・アカデミー賞」受賞!

2014 年 12 月 1 日 月曜日

 2014年度第52回「レコード・アカデミー賞」の「現代曲部門」賞に、飯野明日香のピアノによる弊社CDCMCD-28302『フランス・ナウ』(CMCD-28302)が選ばれました。

 レコード・アカデミー賞は、わが国の音楽文化の向上に資する目的を持って、音楽之友社が1963年に創設しました。1年間に国内のレコード会社から発売されたクラシック・レコードのうち、『レコード芸術』誌「新譜月評」で高い評価を得たものの中から部門ごとに演奏や録音などの最も優れたディスクを選定し、表彰しています。選定委員は、日本を代表する音楽評論家、音楽学者等によって構成され、27名が名を連ねています。

 弊社CDとしては、昨年の西村朗作品集『天女散花』(CMCD-28283)に続く受賞で、「現代曲部門」での連続受賞となりました。

 受賞CD『フランス・ナウ』は、現代作品のピアノ演奏でも定評のある飯野明日香が、フランスを中心に活躍する12人の作曲家によるソロ作品を集めたアルバムです。フランス現代音楽の「今」がつまったこのアルバムは、発売当初から新聞・雑誌のレヴューで、演奏・企画内容ともに非常に高い評価を受け、「名アンソロジーの誕生」「現代音楽を敬遠していた人に薦めたい」などと紹介されています。まだお聴きになっていない方は、この機会に『フランス・ナウ』を是非お楽しみください。

 選考経過や選考理由等の詳細につきましては、12月20日発売予定の『レコード芸術』2015年1月号をご覧ください。

西村朗のCD『天女散花』が2013年度 「レコード・アカデミー賞」受賞!

2014 年 1 月 8 日 水曜日

 2013年度第51回「レコード・アカデミー賞」の「現代曲部門」賞に、弊社CDの西村朗作品集『天女散花』(CMCD-28283)が選ばれ、現在発売中の『レコード芸術』2014年1月号で発表されました。

レコード・アカデミー賞は、わが国の音楽文化の向上に資する目的を持って、音楽之友社が1963年に創設しました。1年間に国内のレコード会社から発売されたクラシック・レコードのうち、『レコード芸術』誌「新譜月評」で高い評価を得たものの中から部門ごとに演奏や録音などの最も優れたディスクを選定し、表彰しています。選定委員は、日本を代表する音楽評論家、音楽学者等によって構成され、27名が名を連ねています。

選定委員の佐野光司氏による「選考経過」によれば、西村朗は「今日最も油の乗り切った作曲家の一人」で、『天女散花』については「作品も演奏も文句なし」と非常に高く評価されています。
同じく選定委員の石田一志氏による「CD紹介」によれば、演奏については「大オーケストラ作品とは異なったセンシティヴな西村の音楽の機微に触れた、素晴らしい演奏解釈をこのヴィルトゥオーゾ集団(東京シンフォニエッタ)が行なっている[中略]藤原亜美のピアノ、最後のギター協奏曲での鈴木大介の独奏も見事」、収録作品については「4作のどれもが聴きまごうことなく西村のサウンド世界を開示しているのだが、同時にそれぞれに特色が鮮明で多様な語り口をもっている[中略]意欲的でありながら硬直したところは一切なく、その筆致は柔軟自在で、どの響きも活きている。雄弁であるが品位があり、威圧的に緊張を強いることも無い。この作曲家が辿りついた新しい境地がここに味わえる」と、いずれも最大級の賛辞が送られています。

まだこのCDアルバムをお聴きになっていない方は、この機会にぜひ西村作品の魅力をお楽しみください。

なお、表彰式は1月15日に行なわれる予定です。選考理由等の詳細につきましては、『レコード芸術』2014年1月号をご覧ください。

松居直美のCDが芸術祭レコード部門優秀賞を受賞

2013 年 12 月 26 日 木曜日

CMCD-15135〜6 11月25日にリリースされた『J.S.バッハ:ライプツィヒ・コラール集 BWV651−668a/松居直美』(CMCD-15135〜6)が、平成25年度(第68回)文化庁芸術祭レコード部門優秀賞に輝きました。

 受賞理由として、「バッハ時代に建造され、オリジナルに近い状態に保たれている歴史的楽器を用いた録音。コラールの内容解釈に裏付けられた端正な演奏は、絶妙な音栓配合とテンポにより各声部が生き生きと歌う様子がクリアーに聴き取れ、バランスのとれた自然な録音とあいまって、地味に思われがちなこの作品集の真価を改めて認識させてくれる。」と、高い評価をいただきました。

 世界的な活躍を続ける名手、松居直美の円熟の妙技がつまったCDは好評発売中です。

弊社録音エンジニア高島靖久、宮田基樹が日本プロ音楽録音賞受賞!

2013 年 12 月 17 日 火曜日

去る2013年12月6日、「第20回日本プロ音楽録音賞」の授賞式が開催され、弊社録音エンジニアの高島靖久と宮田基樹が、「2chパッケージメディア クラシック」部門優秀賞の受賞者となりました。

「第20回日本プロ音楽録音賞」受賞作品一覧はこちら

対象となった録音作品は、ボリス・ベクテレフ(ピアノ)の演奏によるスクリャービン:練習曲 嬰ハ短調 作品2-1で、CDアルバム『スクリャービン:練習曲全集/ボリス・ベクテレフ』(CMCD-28281)に収録されています。当アルバムでは、高島が録音を、宮田が編集を担当しています。

「日本プロ音楽録音賞」は、音楽とオーディオ文化の向上に努める録音エンジニアの感性と技術にスポットライトを当てるもので、毎年開催されています。
受賞作となった「スクリャービン:練習曲」を収録したアルバムは、日本プロ音楽録音賞を賛助している『レコード芸術』誌の中沢十志幸編集長の推薦を受け、エントリーしたものです。
同賞の副審査委員長を務める高田英男氏の講評によれば「この録音は、ワン・ポイントです。ワン・ポイント録音は非常にシンプルですが、実は大変むずかしい。直接音と間接音のバランスをちょうどうまくとって、ポイントを決めて録音していくのですが、(受賞作の録音は)非常に余裕のある音で、安定した低域の解像力もあって、本当に音楽の深さを感じる音づくりになっていると感じました。録音技術が素晴らしい、ということも当然ですが、(エンジニアが)楽曲への理解、時代背景、演奏している方の思い、ホールの音響空間など、ひとつひとつのものを大変深い造詣をもって判断されており、結果としてこのような素晴らしいサウンドができるのではないかと感じました。」と、たいへん高い評価をいただきました。
なお、このアルバムは、24bit/176.4kHzのハイビット・ハイサンプリングで収録されていますが、クリプトンHQMストアより、この高音質音楽データ(HQMD-10036)も配信されておりますので、この機会にCDと合わせ、ぜひお楽しみください。

[受賞の言葉]
この度はご選考いただき、誠にありがとうございます。ソロ・ピアノの録音は最も難しい録音の一つだと常々感じています。特にクラシック音楽でのピアノ作品は楽器が確立されたバッハやモーツァルトの時代から現代に至るまで多くの作曲家がピアノの可能性を追求し続け、作品に残してきました。ピアノという楽器もそうした作品と共に発展してきた楽器だと思います。曲ごとに音色の作り方が重要で、タッチ、音の伸び、倍音の響き、直接音と反射音のバランスなど、毎回試行錯誤の連続です。
この作品は、イタリアの教会でファツィオーリ(FAZIOLI)というイタリア製のピアノで録音しました。ピアノは楽器ごとに音のバランスも音色も異なりますが、特にメーカーが変わると設計構造が異なるので、マイクのセッティング・ポイントも大きく変わります。曲を理解し、色々な音色が重なり合う音場空間で伝えたい音を捕まえることがエンジニアの重要な仕事の一つと思って現在も経験を重ねているところです。
今回の受賞は目指して来た方向が間違いではなかったと言う自信に繋がるものになりました。審査委員の皆様、現地スタッフの皆様、CD製作関連会社の皆様、そして素晴らしい音楽を奏でていただいた巨匠ベクテレフ氏に感謝申し上げます。
株式会社カメラータ・トウキョウ 高島靖久