2013年4月19~21日/シンフォニア・スタジオ(ウィーン・コンツェルトハウス)
収録曲目:
ツェムリンスキー:チェロ・ソナタ イ短調
エマニュエル・モール:アリア
:チェロ・ソナタ 第1番 ハ短調 作品22
タマーシュ・ヴァルガの新録音!
永年、デュオとして度々コンサートで共演し、プライヴェート盤として二人で自主制作したCDにブラームスのソナタ2曲やその他数枚。ピアニストのクリストファー・ヒンターフーバーがナクソスが専属契約のような形で他社への録音をしばっていたために、僕も10数年の友人だがレコーディングを控えてきたが、チェロのタマーシュ・ヴァルガはこのところ、カメラータへの録音で優れたアルバムを発表し、評価も高くなってきたので、やっと自由に録音が出来るようになったヒンターフーバーとのデュオで、初めはブラームスのチェロ・ソナタ2曲の収録を目論んでいて、そのプログラムを決めたのは昨年(2012年)の12月。
ところが彼等が楽友協会のグレスナー・ザールで2月12日に行ったデュオ・リサイタルのコンサートを聴いて、録音曲は僕の中で一転した。チェロ・ソナタはこれまで作曲家の名前すら知らなかった私にこの曲を知ったのは、衝撃的な出会いになった。この日に二人が奏いたほかの曲目、ポッパーのソナタとツェムリンスキーのイ短調のソナタ。僕と録れば、ヴァルガがチェリストで、もっと上のレヴェルの演奏になると考えたので、ナクソスの契約がどうなっているかを正した上で、ポッパーを見送ることにして、収録曲を決めた。
ところが、二人のスケジュールで録音に時間が取れるのが限られていて、その中でスタジオを確保するのに苦労をした。
結局、レコーディングは4月19日~21日、コンツェルト・ハウスの地下にあるシンフォニアというスタジオになった。ここに入ったスタインウェイの状態が良いということが決めてになったが、この3日の前後の二人のスケジュールは、ヒンターフーバーがフンメルのピアノ協奏曲を連続してコンサートで弾くので、ずっとウィーンにいない。タマーシュはウィーン・フィルの演奏旅行でロシア、北欧に行っていて、シュルツの葬儀の4月14日、それにも出席できないという多忙。ただ、録音する2曲は二人は幾度となくコンサートで奏いてきたレパートリーだけに、私は安心して録音に望んでいた。
コンサートホールと違って、録音を目的としたスタジオは遮音やノイズ対策には優れているが、クラシック音楽の録音にはいつも「響き」を直接音とバランスよく録るのに苦労する。今回も初日にピアノの位置を数回動かしたりしながら3時間近く音決めに手間取った。音が決まればあとは音楽だけの問題で、その点ではこの二人と仕事をするのは楽しい作業だった。ともかく我々が欲しい演奏を厳しく吟味しながら録っていった。特に二人ともがアパショナートでffという形の中ではバランスを取るのがスタジオでは直接音がダイレクトに多くマイクに入ってくるので、細かくここではチェロを、ここではピアノのこのフレーズをしっかりと聴かせてほしいと頼んだ。
ツェムリンスキーのソナタでは、ヒンターフーバーは前の録音とは全く演奏は違う時限に届いたと喜んでくれた。一日も早く発売をいそぎたい録音だ。
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