レコーディング・ニュース(2014年3月/イタリア)

 久しぶりに3月、イタリアのウンベルティーデに来て、ソプラノのジェンマ・ベルタニョッリと初めてレコーディングを行いました。
 2012年12月23日フィレンツェでトスカーナ交響楽団とメンデルスゾーンの第二交響曲のソリストで彼女が歌うと知って、そのためだけにわざわざ日本から彼女の声を聴きに来たのを昨日のことのように思い出します。
 前から声をかけていたとはいえ、コンサートが終わった後に、2013年の草津音楽アカデミーの講師として来てもらいたいと交渉して快諾を得て、クリスマスイブとクリスマスを一人ぼっちになりながらも、楽しい気分で過ごしました。もちろん世界中でもっとも好きな街のひとつですから、フィレンツェのクリスマスも人生の中で一度は味わっておきたかったのかも知れません。
 さて、ジェンマとはもうすっかり草津で一緒に仕事をして親しい仲ですが、イタリアに来ると、たとえばテレビで彼女がミラノのスカラ座で子供たちのために歌ったコンサートのライブを見る機会があって、彼女のこの国での人気に驚かされていました。エンニオ・モリコーネの映画で主題曲のヴォカリーゼを若い頃に担当したこともあって、広く大衆まで彼女の名前と声は知られているようです。
 彼女の声の特質はもちろん、コロラトゥーラ・ソプラノですから、声の軽さと高い声域でのすばらしいコントロールにありますが、僕の感じるのは声の純粋さ、透明でクリスタルな美しさです。音程が悪くなると、「お腹の支えが上がっているのかな?」というと、若い頃からボイストレーナーの先生にそれだけは基本をみっちりと身につけさせられたから、すこし休めば大丈夫と、テイクを多く録るとなるとすこし頭を切り替え、身体も休めて、またもとのしっかりと芯のある力強い声にもどってきます。頼もしい歌い手であります。しかも、いつも楽しそうに振舞ってくれるので、周辺の気遣いを逆に安心させてくれます。
 今回は音楽監督的存在に、クラウディオ・ブリツィを据えたので、古楽の奏法を取り入れ、オーケストラはいつもの「イ・ソリスティ・ディ・ペルージャ」ではなく、2年ほど前からペルージャの秋の音楽祭で活躍するために結成された”Orchestra da Camera di Perugia”のメンバー。それに特別にテオルボ、リュート、バロックギターを弾くGian Luca Lastraioli氏をフィレンツェから招きました。
 録音のメインの曲は、モーツァルトのモテット「踊れ、喜べ、汝幸いなる魂よ」だが、普通にオーケストラで録音するのと違って、随所にバロック的要素を組み込み、ゲネラルバスが活躍するようにして演奏、録音しました。それは一緒に収録したヴィヴァルディのモテット「まことの安らぎはこの世にはなく」やヘンデルのアリアも同じスタイルでオーケストラが演奏したということで、是非ともその演奏と歌を多くの方に楽しんでもらいたいと思っています。

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