レコーディング・ニュース(2013年1月/ウィーン)

アルテンベルグ・トリオによるシューマン:ピアノ三重奏曲 全曲録音スタート

 2012-2013シーズンにウィーン楽友協会の室内楽シリーズで「アルテンベルグ・トリオ」は都合5回のコンサートを行う。そこではシューマンのピアノ・トリオ3曲と幻想小曲集のピアノ・トリオ版(シューマン自身の編曲/1850年)と、ベートーヴェンの作品1のピアノトリオ3曲が含まれていて、それを全曲収録しようというのが我々の企画の意図でもあり、また彼等のこの室内楽チクルスの目的でもある。
 ブラームス・ザールのライヴ録音は、シューベルトの八重奏曲をウィーン弦楽四重奏団とシュミードル、トゥルコヴィッチらと録音した事があるが、それも15年ほど前の話で、久し振りにこの楽屋の一隅にもどって来た感があり懐かしかった。
今回は1月28日(月)3回目のコンサートの収録で、プログラムは1曲目にシューマンのピアノ・トリオ 第2番 ヘ長調 作品80で、次に珍しいショスタコーヴィチの「ブロークによる7つの詩」で、ソプラノがブカレスト生まれのロクサナ・コンスタンティネスクが加わり、後半はベートーヴェンのピアノ・トリオ 変ホ長調 作品70-2と変ロ長調の1812年に作曲されたがアレグレットのみ残されている作品が演奏された。
 金曜日に「フィルハーモニカー・バル」でムジークフェラインは舞踏会場に化けていたので、どの部屋からも備品のピアノや鏡などすべてが消えていたのだが、この日の朝に戻されてきたので、混乱の中で30分も遅れてゲネプロが始まり、そこで音を決め、補いのテイクとなる録音もするという強行軍。

 ともかく、このトリオは昨年までのメンバーの内、ヴァイオリニストのアミラン・ガンツを残してピアノもチェロも若手に変わった訳だが、そこにクリストファー・ヒンターフーバーがピアノで加わり、チェロにはウィーン交響楽団の「8本のチェリスト」というグループのまとめ役でもあり、カメラータにもハンス・ガルのピアノ・トリオ等の録音を残している、クリストフ・シュトラートナーが入ったので、私の興味はヒンターフーバーを含めた若い二人の才能を買って一も二もなく、このトリオの録音を決めた次第である。
 実際に録音を始めての喜びは前からひいていたアミラン・ガンツが室内楽のヴァイオリン奏者として音がまず清潔で演奏が繊細、しかも居て欲しい時はしっかりと存在感を示す素晴らしい音楽家だと認識できたことである。
 ヒンターフーバーの才能はウィーンでも頭抜けたピアニストとして若手No.1の評価だが、それを裏切らない自由でそれでいつも音楽をしているといったタイプで、素晴らしい演奏家のひとりである。ながく「ナクソス」とのレコーディング契約にしばられていて、カメラータへの録音が出来なかったが、今はフリー。4月にはこのトリオのライヴ録音に続いて、タマーシュ・ヴァルガとブラームスの2曲のチェロ・ソナタの録音が決まっている。
 1680年製のアントニオ・ストラディヴァリをひくシュトラートナーは、テンペラメントが少しありすぎて、時には形やリズムをはみ出す傾向があるが、ともかくよくひける器用なチェリスト。シリーズの回数が進むにつれて、このトリオも徐々にしっくりと一体感を持つようになると思うが、先ずは才能あふれている若く、新鮮さが好感を抱かせる。
 ブラームス・ザールでのライブ録音によるシューマンのピアノ・トリオ全集を楽しみにお待ちいただきたい。

タグ: , , , , ,