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【訃報】クラリネッティスト ペーター・シュミードル氏

2025 年 2 月 4 日 火曜日

ペーター・シュミードル2025年2月1日、世界的クラリネッティストのペーター・シュミードル氏が永眠されました。84歳でした。

シュミードル氏は1941年、チェコのオルミュッツ生まれ。ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者を務めた祖父、父を持つ音楽一家で育ち、ウィーン国立音楽大学でルドルフ・イェッテルに、その後ボスコフスキーに師事しました。

1965年にウィーン国立歌劇場管弦楽団、1968年にウィーン・フィルハーモニー管弦楽団に第1クラリネット奏者として入団、1982年より第1首席奏者となり、2010年まで同団で活躍しました。ソリストとしても、ウィーン・フィル、パリ管弦楽団、ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団、NHK交響楽団などのオーケストラや、カラヤン、ベーム、バーンスタイン、プレヴィン、レヴァイン、ムーティ、小澤征爾らの指揮者と共演。室内楽においても新ウィーン八重奏団、ウィーン・リング・アンサンブル、ウィーン木管ゾリステンのメンバーとして活躍しました。

レコーディングでもドイツ・グラモフォン、デッカ、テラークなどのレーベルに多くの録音を残し、またザルツブルク功労金勲章(1984年)、オーストリア芸術名誉十字勲章(1991年)なども受章しました。

1967年からウィーン国立音楽大学で教鞭を執り、エルンスト・オッテンザマー、ヨハン・ヒンドラー、ノーベルト・トイブル、アンドレアス・ヴィーザーら数多くの門下生を輩出。日本においても、草津夏期国際アカデミー&フェスティヴァル、PMFなど数多くのマスター・クラスに講師として参加し、後進の育成に貢献しました。

弊社スタッフ一同、ここに慎んで哀悼の意を表し、安らかな眠りにつかれますよう、お祈り申し上げます。

ペーター・シュミードル ディスコグラフィー
ルードルフ大公:クラリネットのための作品集(CMCD-28339)
ブラームス、シューマン&ベルク:クラリネットのための作品集/カニーノ(CMCD-20049)
モーツァルト:「ケーゲルシュタット・トリオ」/遠山慶子&パイシュタイナー(CMCD-20022)
ブラームス:ホルン三重奏曲&クラリネット三重奏曲/ストランスキー、岡田博美(CMCD-28075)
ライヒャ:ホルン五重奏曲&クラリネット五重奏曲/ストランスキー&パノハSQ(CMCD-28024)
ベートーヴェン:「街の歌」/シピリ&岩崎洸(CMCD-20025)
シューベルト:八重奏曲/ウィーンSQ 他(CMCD-15051)
メモリー・オブ・ヴォルフガング・シュルツ/アンサンブル・ウィーン=ベルリン 他(CMCD-28289)
恋人のワルツ/ウィーン・ビーダーマイヤー・ゾリステン(CMCD-15093)

【追悼】ウェルナー・ヒンク/井阪紘

2024 年 6 月 12 日 水曜日

ウェルナー・ヒンクウェルナー・ヒンクウェルナー・ヒンク

今年5月に他界されたヴァイオリニスト、ウェルナー・ヒンク氏と50年以上にわたり協業を続けてきた弊社代表取締役社長、およびレコード・プロデューサーの井阪紘からヒンク氏への追悼メッセージが、滞在中のウィーンより寄せられました。
弊社スタッフ一同、ウェルナー・ヒンク氏にあらためて哀悼の意を表し、メッセージを掲載いたします。

ウェルナー・ヒンクの死は、私たちにとって最も悲しい知らせだった
井阪紘
(カメラータ・トウキョウ 代表取締役社長/レコード・プロデューサー)

ウィーン弦楽四重奏団(1964)ウィーンには室内楽を楽しむ永い永い伝統があり、戦後でもアメリカ人の作った「ウェストミンスター」というレーベルに、バリリ四重奏団やウィーン・コンツェルトハウス四重奏団が数多くのレコーディングをしていて、日本人の多くの人が、そのレコードを愛聴してきた。
1960年代に入って、その活動に陰りが見えてきたときに、1964年にウェルナー・ヒンクたちが創った「ウィーン弦楽四重奏団」が、その伝統を継ぐようにスタートした。
コンツェルトハウス四重奏団の成した仕事で一番偉大だったと思えるのは、シューベルトの弦楽四重奏曲全集だった。この録音の初期の弦楽四重奏曲は、当時、正確なエディションが見つかっていなくて苦労したという話を、我々のレコーディング・セッションを見に来てくれたコンツェルトハウス四重奏団のチェリスト、フランツ・クヴァルダ本人から聞いた。

CMCD-99059ウィーン弦楽四重奏団とは、RCA時代に「死と乙女」「ロザムンデ」、最後のト長調の弦楽四重奏曲あたりまでは録音したが、残りの曲を録りたいと思っても、録音経費とレコードの売上が見合わないと、会議で論議されただけだった。シューベルトの弦楽四重奏曲全集は「カメラータ」というレーベルを立ち上げた最初に私が取り組む仕事だと思って始めた。
幸いにも、録音が磁気テープの録音から、デジタル録音に変わる時代で、日本ビクターのプロ録音用のレコーダーをアピールする必要があって、15kg以上もある重い実験機材をウィーンに持参することを許可して運搬の航空運賃も半分負担してくれることとなった。録音エンジニアもいない私は、ウィーン大学のトーン・マイスターの教授にレコーディングのエンジニアを依頼したのだが、録音初日に「行けない」と急に言われて、バウムガルテンというスタジオ付の名エンジニア、カミコフスキー氏のヘルプで、仕方なく自分でマイク・セッティングをして録ったのが、カメラータとヒンクたちの最初の共業、シューベルトの「死と乙女」の録音であった。
アナログ時代、30cmの磁気テープ録音では、38cm/secでテープを回しても、30分しか録音できない。1枚のレコーディングに20本のテープを使うのは通常であり、その時は現地で基本的なテープ編集をして、残したテープをコピーを録ってもらった上で船便で送る。そんな方法で仕事をしていたのを覚えている。

ヒンクたちとのシューベルトの弦楽四重奏曲全集は、このように最初期に行われたデジタル録音で、録音を終えウィーンから帰国する際には、収録したUマチックのテープをLP2枚分の録音でも10本から12本に収めて持ち帰れた。
こうして始まったヒンクたちと私とのシューベルトの弦楽四重奏曲の全曲録音は、4~5年かかって完成したが、すべてはシューベルトの創作に奉仕した音楽活動のつもりであった。

CMCD-99059そこから、ヒンクの柔らかく優しく弾くヴァイオリン演奏を、どう音楽に残していけるかを考え、最終的に遠山慶子さんとのモーツァルトのヴァイオリン・ソナタの録音に結びついた。2人のデュオでは最初にシューベルトのソナチネ全曲ベートーヴェンのソナタ「春」なども録っていたが、時間がかかってもウィーンのバウムガルテンにあるベーゼンドルファーのピアノを使って丁寧に1曲ずつ録ると決めて準備を始めた。
これは、ヴァイオリン・ソナタ選集としてセットにまとめて出すこともできたので、2人の仕事に感謝しているが、これも比類なく優れたヒンクの演奏に助けられている。

草津で行われている音楽アカデミー&フェスティヴァルの開催期間は、ザルツブルク音楽祭の真っ最中なので、1996年になるまでヒンクは参加を遠慮していたが、なんとか他のコンサートマスターと調整して行けるようにスケジュールを組むと宣言して、草津に来るようになり、特に美智子上皇后とは都合8回もそこで共演する栄誉をいただいている。それは上皇后様が、遠山慶子のパートナーであるヒンクに対して敬意を持たれていたこともあったと思う。

ウェルナー・ヒンクがウィーン・フィルのコンサートマスターを辞したのは2008年だったが、その年のニューイヤー・コンサートに、プレートルが指揮するにあたって第1コンサートマスターを引き受け、出演した公演は華やかで印象的だった。
2018年頃から急に音程等が確かでない状態になり、コロナの頃の2020年に入院して癌を発見。それでも快方に向かっていたが、この春に喉への転移が判明した。5月21日昼、やっと自宅に戻り、午後を家族と過ごし、その夜、眠るように亡くなった。

一緒に音楽にかかわって、家族同様に付き合って来ただけに、こんな素晴らしい音楽家を失って、私には言う言葉がない。

2024年6月11日 ウィーンにて

写真:(C) Wilfried Kazuki Hedenborg

【訃報】ヴァイオリニスト ウェルナー・ヒンク氏

2024 年 5 月 23 日 木曜日

ウェルナー・ヒンク2024年5月21日、世界的ヴァイオリニストのウェルナー・ヒンク氏がウィーンの自宅にて永眠されました。氏はかねてより病気療養中で、81歳でした。

ヒンク氏は1943年、ウィーン生まれ。ウィーン市立音楽院でヴァイオリンを専攻した後、ウィーン・アカデミーでフランツ・サモイル教授の教えを受け、62年に最優秀にて卒業。64年にウィーン・フィルの第1ヴァイオリン、68年に第1ヴァイオリン首席、74年にはコンサートマスターに就任しました。ウィーン・フィルに加入した64年にウィーン弦楽四重奏団を同オーケストラ・メンバーと結成。事実上コンツェルトハウス弦楽四重奏団の活動を引き継ぐ形でウィーン楽友協会等のコンサートに出演しました。

1973年よりレコーディング活動を開始し、RCA、カメラータに多数の名録音を発表。『シューベルト:「死と乙女」』では1982年度のレコード・アカデミー賞を受賞しました。

日本では30年以上にわたり、ピアニストの遠山慶子とレコーディングおよびコンサートで多数共演。モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会、および『モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ選集』の全曲録音で2009年度 第51回毎日芸術賞を受賞しました。

後進の教育にも熱心で、1996年から2018年までの22年間にわたり、草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァルに講師および演奏者として毎年参加。その温かい人柄と音楽性で多くの受講者たちを送り出しました。

弊社スタッフ一同、ここに慎んで哀悼の意を表し、安らかな眠りにつかれますよう、お祈り申し上げます。

ウェルナー・ヒンク ディスコグラフィー
シューベルト:「死と乙女」他/ウィーンSQ[紙ジャケ仕様](CMCD-99059)
シューベルト:「死と乙女」&「ロザムンデ」/ウィーンSQ(CMCD-15004)
シューベルト:弦楽五重奏曲&弦楽四重奏断章/ウィーンSQ&イーベラー(CMCD-15052)
シューベルト:室内楽全集 I (弦楽四重奏曲全集)/ウィーンSQ(CMCD-99012~7)
シューベルト:室内楽全集 II/ウィーンSQ(CMCD-99018~22)
モーツァルト:弦楽四重奏曲 第17番「狩」、第15番&第8番/ウィーンSQ(CMCD-15006)
モーツァルト:弦楽四重奏曲 第19番「不協和音」&第14番「春」/ウィーンSQ(CMCD-20071)
ハイドン:「皇帝」、ベートーヴェン:「ラズモフスキー第1番」/ウィーンSQ(CMCD-28278)
ハイドン:「五度」、「ひばり」&「セレナード」/ウィーンSQ(CMCD-15005)
ブラームス:弦楽四重奏曲 作品51-1&2/ウィーンSQ(CMCD-28153)
ドヴォルジャーク:弦楽四重奏曲 第12番「アメリカ」&第10番/ウィーンSQ(CMCD-20027)
ドヴォルジャーク:「糸杉」/ウィーンSQ(CMCD-15054)
ツェムリンスキー、べルク&ウェーベルン:弦楽四重奏のための作品集/ウィーンSQ(CMCD-18008)
ポップ・ヒッツ/ウィーンSQ(CMCD-15067)

モーツァルト:クラリネット協奏曲&クラリネット五重奏曲/ライスター(CMCD-15007)
モーツァルト:クラリネット五重奏曲 イ長調 K.581 他/ライスター&ウィーンSQ[紙ジャケ仕様](CMCD-99060)
クルーゼル:クラリネット四重奏曲/ライスター(25CM-333)

シューベルト:ピアノ五重奏曲 D.667 「ます」/スタンチュール&ウィーンSQ ほか(CMCD-28028)
シューベルト:ピアノ三重奏曲 第1番&「ソナタ楽章」/スタンチュール,ヒンク&ドレシャル(CMCD-20080)
シューベルト:ピアノ三重奏曲 第2番&「ノットゥルノ」/スタンチュール─ヒンク─ドレシャル(CMCD-15104)
シューベルト:ヴァイオリン・ソナタ/ヒンク&スタンチュール(CMCD-15105)
ブラームス:ピアノ三重奏曲 第1番&ピアノ四重奏曲 第1番/スタンチュール、ヒンク、ドレシャル&オクセンホファー(CMCD-28146)
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ全集/ヒンク&スタンチュール(CMCD-28056)
ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲「幽霊」&「大公」/スタンチュール、ヒンク、ドレシャル(CMCD-28242)
ミヒャエル・ハイドン&モーツァルト:6つのデュエット―ヴァイオリンとヴィオラのための/W.ヒンク&M.ヒンク(CMCD-20091~2)

モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ選集(5枚組)/ヒンク&遠山慶子(CMCD-10003〜7)
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ選集 I/ヒンク&遠山慶子(CMCD-25007)
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ選集 II/ヒンク&遠山慶子(CMCD-28008)
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ選集 III/ヒンク&遠山慶子(CMCD-28020)
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ選集 IV/ヒンク&遠山慶子(CMCD-28114)
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ選集 V/ヒンク&遠山慶子(CMCD-28187)
モーツァルト:ピアノ協奏曲 第20番,第21番/遠山慶子(CMCD-20086)
モーツァルト:ピアノ四重奏曲全集/遠山慶子&ウィーンSQメンバー(CMCD-20087)
モーツァルト:ピアノ作品集/遠山慶子(CMCD-28318)
モーツァルト:ディヴェルティメント 第17番/ヒンク&イ・ソリスティ・ディ・ペルージャ(CMCD-28048)
シューベルト:ソナチネ全集/ヒンク&遠山慶子(CMCD-20026)
ベートーヴェン:「スプリング・ソナタ」/ヒンク&遠山慶子(25CM-147)
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ集 II/ヒンク&遠山慶子(30CM-416)

【訃報】チェリスト フリッツ・ドレシャル氏

2015 年 8 月 24 日 月曜日

Fritz Dolezal 2015年8月20日、世界的チェリストのフリッツ・ドレシャル氏が永眠されました。享年68歳でした。
 ドレシャル氏は1970年代前半よりウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン八重奏団等で演奏活動を開始し、1974年にウィーン・フィルのチェロ首席奏者に就任しました。そして1985年からウィーン弦楽四重奏団のメンバーとしても演奏活動を開始し、カメラータ・トウキョウから多数の名録音をリリースしました。昨年(2014年)の11月には、弊社招聘によるウィーン弦楽四重奏団の創設50周年記念公演のために来日、各地で絶賛を受けました。
 聴衆から演奏家まで多くの人たちに愛された温厚な人柄、そしてその人柄がそのまま音になったようなドレシャル氏の名演奏は、いつまでも皆様の心の中に生き続けることでしょう。弊社スタッフ一同、ここに慎んで哀悼の意を表し、ご冥福をお祈り申し上げます。

2012年3月25日新譜のご案内[クラシック/CD]

2012 年 3 月 25 日 日曜日

 カメラータの4月新譜(3月25日発売)2タイトルをご紹介いたします。

CMCD-28248 1枚目は『Dedicated to Piccolo〜ラスト・レコーディング/ギュンター・フォーグルマイヤー、シュテファン・メンドル』(CMCD-28248)です。
 『フォーグルマイヤーが私の弟子となったのは、彼が14歳の時のこと。ほどなくして彼は、私がそれまで見てきた生徒の中でもっとも才能に溢れている存在であることを、身をもって示してくれた。願わくば“バーディ”という愛称で親しまれた彼が、私たちの記憶の中で、いつまでも生き続けてくれますように。』……ヴォルフガング・シュルツ
 2012年1月、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のフルート奏者ギュンター・フォーグルマイヤーが永眠されました。本アルバムは2011年の来日ツアーにあわせて制作がスタートしましたが、フォーグルマイヤーの急逝により、残念ながら彼の最初で最後のピッコロのための作品集となりました。ファンのみならず団員からも愛されたフォーグルマイヤーによるラスト・アルバムをぜひお聴きください。

CMCD-15129〜30 2枚目は『ハイドン:2本のフルートのための「エルデーディ四重奏曲 作品76」/ヴォルフガング&マティアス・シュルツ』(CMCD-15129〜30)です。
 ヴォルフガング・シュルツはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団首席フルート奏者としての輝かしいキャリアを終えつつも、熟練の技と豊かな歌心はいまだ健在。優雅な風格をたたえたフルート奏者として活躍するシュルツとその息子マティアス・シュルツによる、フルート・デュオのアルバムです。ハイドンの「五度」「皇帝」など名曲で知られる「エルデーディ四重奏曲」を2本のフルートのために編曲した、シンプルながらも豊かな味わいを持つ魅力的な作品を収録。シュルツ親子による豊かな味わいに富んだフルート・デュオはフルート愛好家必聴のアルバムです。