箏の伴奏による美しい日本の唱歌のCD「明治の唱歌とエッケルトの仕事 藍川由美、野坂惠子&小宮瑞代」 (2006年6月発売)を紹介します。
明治時代、足かけ21年間日本に滞在したドイツ人音楽家で、明治13年に撰譜された国歌「君が代」の編曲も行ったフランツ・エッケルト(1852~1916)。まだオルガンやピアノを国内生産できる見通しが立っていない時代、唱歌教育を推進するために、音楽取調掛の伊澤修二は、当時の日本人にとってきわめて身近な楽器「箏」着目し、エッケルトに箏二面伴奏による編曲を依頼しました。ピアノやオルガンの伴奏に比べ、弾いたのち響きが減衰する箏の伴奏は、日本語が持つたおやかさを十分に活かせ、また、歌詞も聞き取りやすく、日本語の繊細な響きと非常によく合います。
「東西二洋ノ音楽ヲ折衷シテ新曲ヲ作ルコト」を目指した伊澤、それに貢献すべく外国曲や日本の伝統音楽などを箏合奏曲用に編曲して五線譜に記す仕事と唱歌の箏伴奏譜を手がけたエッケルト。曲目は「桜」や「富士筑波」といった日本の楽曲から、西洋の民謡やウェルナーの「野薔薇」まで、正に「東西二洋の音楽の折衷」です。
演奏は藍川由美(ソプラノ)、野坂操壽(十三絃箏/二十五絃箏)、小宮瑞代(十三絃箏/低音二十五絃箏)、花岡聖子(十三絃箏)。120年の歳月を経て初めて音になったエッケルトの仕事をお楽しみください。
■ 曲目
『小學唱歌集』第二編(明治16年)
フランツ・エッケルト 編曲/箏二面伴奏
[1] 第35「霞か雲か」(ドイツ民謡)
[2] 第38「燕」
[3] 第41「岸の桜」(南フランス民謡)
[4] 第42「遊猟」
[5] 第43「みたにの奥」
[6] 第45「栄行く御代」(クリスマス讃美歌)
『小學唱歌集』第三編(明治17年)
フランツ・エッケルト 編曲/箏二面伴奏
[7] 第53「あふげば尊し」
[8] 第55「寧楽の都」
[9] 第56「才女」(スコット作曲『アンニー・ローリー』)
[10] 第58「めぐれる車」(フィッシャー作曲『復活祭前聖金曜日に』)
[11] 第60「秋の夕暮」
[12] 第62「秋草」
[13] 第63「富士筑波」(地唄『黒髪』より)
[14] 第64「園生の梅」(箏組歌)
[15] 第70「船子」【輪唱】(ライト作曲『Row your boat』)
[16] 第73「誠は人の道」(モーツァルト作曲『魔笛』より)
[17] 第78「庭の千草(原題/菊)」(アイルランド民謡)
[18] 第80「千草の花」
[19] 第89「花鳥」+「野薔薇」(ウェルナー作曲『野薔薇』)
箏三面合奏
[20] ふきの曲(箏組歌)[フランツ・エッケルト 編曲]
[21] 久方曲[フランツ・エッケルト 編曲]
[22] ピッツィカート・ポルカ
[J.シュトラウス II世&ヨゼフ・シュトラウス 作曲/
フランツ・エッケルト 編曲]
『箏曲集』(明治21年)
[23] 第2「桜」
『中等唱歌集』(明治22年)
[24] 第15「埴生の宿」