カメラータ・トウキョウ レコーディング・ニュース
 
ウィーン・ピアノ五重奏団による
ポーランドの忘れられたピアノ六重奏曲、五重奏曲
  2008年3月6日〜9日 スタジオ・バウムガルテン(ウィーン)

 ヨァゲン・フォゥグとフォゥグ・浦田陽子を中心に結成されている「ウィーン・ピアノ五重奏団」は、ピアノとヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス各楽器1名から成り、シューベルトのピアノ五重奏曲「ます」を弾く編成。したがって、我々はコントラバス入りのピアノ五重奏曲の作品を探していろいろ録音を重ねてきたが、これまでにフンメルのピアノ五重奏曲フェルディナンド・リースのピアノ五重奏曲の2枚が世界初録音の曲を含むとあって録音は注目され、レコーディング、演奏とも好評を得た。
 続きの企画を考えていたところ、コントラバスのユーレック・デュバールがポーランドで入手してきたユゼフ・ノヴァコフスキのピアノ五重奏曲の楽譜を一昨年の春に見せられた。ピアノ・パート譜から判断して録音を決めたが、スコアが存在せず、パート譜しかないので苦労した。もともと、この録音は去年の5月14日〜16日に予定していたが、私が髄膜炎のためエストニアのタリンで入院して中止になったプロジェクトである。
 やっとレコーディングを実現したわけだが、今回は新しいメンバー、特にヴァイオリンのホルガー・グローとヴィオラのロベルト・バウアーシュタッターに注目させられた。グローはグラーツのオーケストラでコンサートマスターを務めていたが、ウィーン国立歌劇場に転じて、今では第2ヴァイオリンのトップを弾いてヴェヒターの後継者として信頼も高い。バウアーシュタッターはウィーン弦楽四重奏団のヴィオラ奏者ペーター・オクセンホファーの弟子で才能豊かなヴィオラ奏者と映った。
 他に収録したのは、やはりポーランドの作曲家、アントニ・ストルペ。21歳で若死にした彼の作品「ピアノ六重奏曲」と「ポロネーズ」(編成はピアノ六重奏曲)の2曲で、「ピアノ六重奏曲」が2つの楽章しかないが、「ポロネーズ」がポーランド賛歌で終楽章的な扱いにピッタリ。作品はどれもがショパンの影響ないしは伝統的なポーランドの舞曲や旋律に基づいていて、親しみのあるメロディーが印象的。未知の作品とはいえ、聴き手を満足させるものと思う。
(井阪 紘)

 【曲目】
 ユゼフ・ノヴァコフスキ(1800〜1865):ピアノ五重奏曲 ハ短調 作品17
 ジグムント・ノスコフスキ(1846〜1909):悲しみのポロネーズ(コントラバスとピアノ)
 アントニ・ストルペ(1851〜1872):ピアノ六重奏曲、ポロネーズ

 【演奏者】
 ウィーン・ピアノ五重奏団
  フォゥグ・浦田陽子(ピアノ)
  ホルガー・グロー(第1ヴァイオリン)
  ロベルト・バウアーシュタッター(ヴィオラ)
  ヨァゲン・フォゥグ(チェロ)
  ユーレック・デュバール(コントラバス)
 トーマス・ヴィンクラット(第2ヴァイオリン)

 使用楽器:ベーゼンドルファー ニュー・グランド 280
 チューナー:照沼 純

[★CDは2009年1月、CMCD-28174として発売]
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