カメラータ・トウキョウ レコーディング・ニュース

ライスターとボーグナーによるロマンティック・ソナタの新録音
  2003年2月1日〜10日 フェルトキルヒ、オーストリア

 長い間シューベルティアーデの会場として使われてきた、ファールアルベルグ州の中心都市フェルトキルヒの、コンセルヴァトリウムの「フェストザール」は市内を流れるイル川に沿った美しい響きのホールで、ここ数年来、ライスターとボーグナーのレコーディングに借りてきた。今回は2月1日から10日まで、都合10日間をかけて、2枚とすこしのプール・レコーディングで、ライスターにとっては、シューベルトの「岩上の羊飼い」以外はすべて初録音というチャレンジである。

 3月発売のこのコンビによるフェルトキルヒでの2枚目「ロマンティック・クラリネット」に続いて、カメラータはこのあと3枚のレコード契約が残っている。その中の約2枚分が、ホフマイスター、ドヴィエンヌ、ヴァンハル、と言ったクラシック・コンポーザーの作品集で、レコード録音の少ない楽曲。傑作が少ないと思われがちだが、レコーディングが少ないのは、どの曲もモーツァルトの協奏曲を吹く場合と同じように、音のコントロールに高い技術を要求される為。音域も恐らくC管に書かれたものと思われ、オーボエに近い高音を駆使しているので、レガートに吹くのは、やはり現在のクラリネットでは難しい。C管のクラリネットはリードが歌口の上にあったと思われる。ともかく、ライスターのような名手にして、自分のすべての演奏技術を投入しても、これらの作品を美しく表現するのは至難の技らしい。

 今回は特にCDのないジャン=グザヴィエ・ルフェーヴルJean Xavier Lefevre/1763〜1829)のソナタを中心に録音した。現在出版されているソナタは7曲。全てで12曲あるらしいが、最初の5曲がOxford University Press で1988年に、第6番、第9番がRicordiからやはり同じ年に出版されている。この内、第1番から第6番までがフェレンツ・ボーグナーのピアノで収録された。ともかく、こうした古典曲ではアティキュレーションとブリージングが音楽の生命を制する訳で、ライスターとそれを綿密に話し合いながらの録音であった。

[★CDは2007年7月、CMCD-28103として発売]

 それ以外にも、ヨハン・バプティスト・ヴァンハルJohann Baptist Vanhal/1739〜1813)のソナタ第3番、これも世界初録音のアントン・エベールAnton Eberl/1765〜1807)のソナタ 変ロ長調 作品10-2などを録音。特にエベールのソナタは手書きの直筆譜より起こされた未出版譜で、バロックからクラシック時代に移る途中の音楽に、これほど新しい時代を予感させる作品が書かれていたとは驚き──と、感想を抱いた。

[★CDは2004年9月、CMCD-28060として発売]

 もう一つのプロジェクトは、歌とクラリネット、ピアノの作品集で、起用されたソプラノは、このところ古楽器を使ったアンサンブルでのミサ曲などで、ソリストとして活躍中するスイスの新人ソプラノ、レティツィア・シェレール(Letizia Scherrer)。曲目はシューベルトのオペラ「謀叛人たち」の中でクラリネットのオブリガート付きソプラノ・ソロとして美しい《ヘレーネのロマンス》。シュポアの名曲「6つのドイツ歌曲」、コンラディン・クロイツァーの「水車」、カリヴォダ「故郷の歌」作品117 等、初期ロマン派の作品を中心に。ライスター入魂のレコーディングは、こうして雪が毎日降り積もるフォーアアルベルグで終わった。

[★CDは2006年2月、CMCD-28081として発売]
ライスター
モニタールームにて左より、ボーグナー、
ライスター、シェレール、井阪
ライスター
ボーグナーとライスター
ライスター
歌曲の録音風景
ライスター
ソプラノのレティツィア・シェレール
ライスター
ライスターとプロデューサーの井阪
ライスター
雪晴れのイル川

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