カメラータ・レコーディング・ニュース 2000/4
 4月24日から4月30日までの1週間、日頃ウィーン録音の多い我々の制作ですが、今回はオーストラリアの西端チロルのアルプスに場所を移して2枚のプロダクションを行いました。
 1枚はフルートのシュルツでバッハのソナタ。場所は「シューベルティアーデ」の会場としても有名なSankt. Geroldの教会で、共演にマリー=ルイーズ・デーラー(イェルク・エーヴァルト・デーラーの娘さん)と、ミラン・トゥルコヴィッチ。もう1枚はフェレンツ・ボーグナーのバルトークのソロ録音で毎年通っているフェルトキルヒ。ここも「シューベルティアーデ」のメイン会場のひとつであるコンセルヴァトリウムのホールで、カール・ライスターとボーグナーのデュオによる、ライスターにとってはすべて初録音のロマンティック・ピース。
 ようやく暖かくなったヨーロッパでの充実した1週間でした。(プロデューサー:井阪 紘)

(1)2000年4月24日〜26日 Sankt. Gerold教会、チロル
   ヴォルフガング・シュルツのバッハ/フルート・ソナタ集

 バッハのフルート・ソナタとしては代表的な4曲。すなわち〈オブリガート・チェンバロとフルートのためのソナタ〉ロ短調 BWV.1030とイ長調 BWV.1032。〈フルートと通奏低音のためのソナタ〉ホ短調 BWV.1034、ホ長調 BWV.1035の2曲にトゥルコヴィッチのファッゴットをコンティニュオとして加え、今回はSt. Geroldの教会で計4曲収録されました。
 残りの1曲は〈無伴奏フルートのためのパルティータ〉イ短調 BWV.1013を予定していますが、これはシュルツ一人なので後日改めて収録の予定。
 シュルツはこのバッハの名曲を何と初めて録音するそうで、共演には最も気心の知れた二人を選びました。マリー=ルイーズ・デーラーはイェルク・エーヴァルト・デーラーの娘でスイスで活躍しています。録音の前日にはシュルツの娘ヴェロニカ・シュルツも加わってコンサートが行われました。
 「アンサンブル・ウィーン=ベルリン」での仲間であるミラン・トゥルコヴィッチは、ウィーンからこの録音だけのために夜行寝台を使ってかけつけてくれました。チロルの山中にあって3日間楽しいレコーディング・セッションでした。
[★CDは2001年秋、28CM-629として発売]
シュルツ&トゥルコヴィッチ
ヴォルフガング・シュルツとミラン・トゥルコヴィッチ
シュルツ&トゥルコヴィッチ
シュルツとトゥルコヴィッチ
St.Gerold教会での録音
St.Gerold教会での録音

(2)2000年4月27日〜30日 コンセルヴァトリウムザール、フェルトキルヒ
   ライスターとボーグナーによるロマンティック・クラリネット・ソナタ

 アルプスからの雪解け水がイル河を荒々しく流れるフェルトキルヒの初春。ベルリンからカール・ライスターを迎えて、イースターの休日を利用してフェルトキルヒの音楽院のホールを借りての録音が4月27日〜30日に行われました。
 ライスターの今回の曲目はすべて本人にとっては初録音。今まで秀れた録音がなかったことで忘れられていたメンデルスゾーンの15歳の時のソナタ 変ホ長調は、終楽章のフーガが難しくかつ作曲上問題があり、カットされたりすることが多いのですが、彼等は完全な形で演奏し、この作品を見直すきっかけを作ったに違いありません。ダンツィのソナタもロマンティックで美しいソナタで、今回のアルバムはライスター入魂の演奏となったと自負しています。
 曲目は以下の5曲。ピアノはベーゼンドルファー・インペリアルが使用されました。

  メンデルスゾーン:クラリネット・ソナタ 変ホ長調
  レーガー:ロマンス ト長調(原曲はヴァイオリン)
  ダンツィ:クラリネット・ソナタ 変ロ長調
  ニールセン:幻想小曲集(原曲はヴァイオリン)
  ロッシーニ:序奏と主題と変奏曲 変ホ長調
  [★CDは2001年3月、28CM-615として発売]
ライスター&ボーグナー
ライスター&ボーグナー
ライスター
ライスター
カール・ライスター
フェルトキルヒを流れるイル河
フェルトキルヒを流れるイル河

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